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金賢玉さんへのインタビュー(『人権と生活』35号、2012年)

金賢玉さんのご逝去(2024年7月)を受けて、本協会の会報『人権と生活』35号(2012年)に掲載した金賢玉さんへのインタビュー記事をオンライン公開しました。ぜひご一読ください。

*関連記事:追悼・金賢玉さん――同胞の生に寄り添った総聯活動家/朴金優綺

『人権と生活』58号目次

人権と生活_58号表紙

■主張 すべての子どもが大切にされる、差別のない社会に向けて

■【特集】外国人学校の子どもたちの権利保障に向けて~子どもの権利条約批准から30年~

◇子どもの権利条約批准30年――「こども基本法」制定などの進展と残された課題 ……平野裕二

◇「子どもの最善の利益」の観点から、朝鮮学校の子どもたちの権利保障を!――子どもの権利条約批准から30年、朝鮮学校の子どもたちの人権を守る闘いから ……宋恵淑

◇高校無償化、幼保無償化、補助金問題以外にも・・・朝鮮学校をはじめとする外国人学校処遇における様々な問題 ……金東鶴

◇本当に「誰も置き去りにしない」社会を目指して―― 地域でブラジル学校のサポートに関わってきた経験から ……河かおる

■インタビュー

◇上村和子さん/「負けない闘い」から「残る闘い」に――人権の視点から、朝鮮学校の子どもたちへの差別を許さない仕組みを日本社会に残す闘いを

■トピック

◇猛威ふるう加害史の抹消――「強制連行」否認、歴史改ざんへの同調・忖度深化 ……常盤辛

■寄稿

◇差別されない権利とは何か?――「『復刻版全国部落調査』出版差止事件」控訴審判決を例に ……河村健夫

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして(17)脱植民地フェミニズムに学ぶ ……前田朗

■会員訪問

◇梁聡子さん(成城大学グローカル研究センター招聘研究員)

■会員エッセイ

◇「人権と生活」のバランス ……朴賢憲

■書籍紹介~人権協会事務所の本棚から~

■人権協会活動ファイル 2023・11~2024・4

■資料 在日同胞出生・死亡統計(1955-2022)、在日同胞婚姻統計(1955-2022)、在日同胞離婚統計(1996-2022)、国連・子どもの権利委員会から日本政府に対し出された朝鮮学校に通う子どもたちに対する差別の是正を求める勧告と関連する子どもの権利条約条文

『人権と生活』58号 主張

すべての子どもが大切にされる、差別のない社会に向けて

日本が子どもの権利条約を批准して今年で30年になる。この条約にのっとり、すべての子どもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、子ども政策を総合的に推進することを目的とする「こども基本法」が2022年6月に成立し、2023年4月に施行された。

しかしながら現在、同じ「学校」でも公・私立間で制度的な支援に違いがあるほか、私立の中でも、民族教育を実施している外国人学校の多くはいわゆる教育基本法上の一条校ではない各種学校の地位にあるため、一条校と同等の普通教育を行っていながらも様々な支援制度の枠組みの対象から外れている。外国人学校に通う子どもたちは、一条校に通う子どもたちと比較して、今も様々な不利益・不公平を被ることを余儀なくされている。

さらに、同じ各種学校の中でもとりわけ朝鮮学校に関しては、政治外交上の理由をもって「高校無償化」制度からも排除され、少なくない自治体において補助金が停止・減額される事態が継続している。こうした状況が構造的差別となり、現在も差別を再生産し続けている。たとえば、低所得者世帯向けの事業として、元来一条校に通う生徒の保護者を対象に各自治体で実施されてきた「私立高等学校等奨学のための給付金」は、「高校無償化」制度が始まったことにより、一条校から「高校無償化」が適用されている各種学校等にその対象が「拡大」された結果、朝鮮学校だけが排除されることとなった。その他、補助金や助成制度の対象とならないことから、学校における保健室運営や学校給食等、子どもたちが本来差別なく享受すべき環境が整わない現実がある。

「こども基本法」において、こども施策の基本理念として「全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること」と規定されているとおり、自身の国籍や人種、信条、性別、障害の有無、家庭の形態はもちろん、子どもたちが通う学校の法的区分などにもかかわりなく、あらゆる子どもたちが上記のような様々な支援制度の対象であると解釈されるべきである。

日本政府は、子どもの権利条約の遵守状況を審査する子どもの権利委員会をはじめとする国際人権条約諸機関によってたびたび出されてきた外国人学校・朝鮮学校差別是正を求める勧告に対して、これまでまったく誠実に向き合ってこなかった。そして、今も政府自ら同条約の精神を裏切り続けている。

様々な制度的枠組みから外れた朝鮮学校をはじめとした外国人学校の運営は財政的にも困難を極めている中、文字通り汗と涙の滲む自助努力と、地域社会における善意に裏打ちされた日本人支援者などによる支援活動で持ちこたえているが、こうした状況を美談で終わらせず、日本の構造的差別を打ち破るための力強い運動を展開していきたい。

『人権と生活』57号 主張

ヘイトのピラミッドを打ち崩す場としての朝鮮学校で

 米国の反ヘイト団体であるAnti-Defamation Leagueが作成した「ヘイトのピラミッド」(46頁参照)は、デマを信じたり受け入れたりするなどの先入観に基づく態度や、いじめや嘲笑などの偏見に基づく行為がピラミッドの下部に位置し、それらが、政治・教育・雇用などにおける差別行為、殺人・放火・脅迫などの暴力行為、特定の集団に対するジェノサイドから成るピラミッドの中間部から上部を下支えしていることを分かりやすく示している。

 このピラミッドに日本における在日朝鮮人の人権状況を当てはめてみると、ネット上に氾濫するデマを信じるコメントなどの先入観に基づく態度、ヘイトスピーチなどの偏見に基づく行為、「高校無償化」制度からの朝鮮学校除外などの差別行為、ウトロ地区への放火事件・朝鮮学校生徒へのヘイトクライムなどの暴力行為に至るまで、在日朝鮮人への「ヘイトのピラミッド」は着々と積み重なっており、100年前の関東大震災時の朝鮮人虐殺というジェノサイドを彷彿とさせる危機的な状況が迫っているといえる。

 在日朝鮮人への「ヘイトのピラミッド」を下支えするのが在日朝鮮人への先入観や偏見だということは、ウトロ地区放火事件の犯人が、「ウトロ地区の住民が土地を不法に占拠している」「在日朝鮮人は日本人よりも優遇されている」などのネット上のデマを鵜呑みにし、在日朝鮮人への差別的な動機に基づいて犯行に至ったことを考えれば容易に納得がいく。

 犯人には在日朝鮮人の知人もいなかったというが、もしも犯人に在日朝鮮人の知人がいれば、ウトロや在日朝鮮人の歴史を正しく学んでいれば、事件は起こらなかったのではないかと思わざるを得ない。事件後、ウトロの住民が放火後の焼け跡を見ながら話したという「もし、火をつけた青年がここへ来ていたらご飯を食べさせてあげたのに。そしたらあんな大それたことせんでも済むやん」との言葉は、まさに事件の本質を突いている。

 在日朝鮮人と出会い、言葉を交わし、知り合っていく。そのプロセスが在日朝鮮人への先入観や偏見を正し、ひいては在日朝鮮人への差別・暴力・ジェノサイドを食い止める防波堤になるのだとしたら、日本各地にある朝鮮学校は、日本で在日朝鮮人と確実に出会い、知り合うことのできる場として、その防波堤の役割を果たしているといえるのではないだろうか。朝鮮学校の子どもたちと触れ合える公開授業、七輪を囲んで焼肉をつつきあう食事交流会、地域の住民が列をなして開門を待つバザーやお祭り……。朝鮮学校は機会あるごとにその門戸を開きながら、誰もが在日朝鮮人と出会える場を提供すべく日々努力を続けている。朝鮮学校を知ることがすなわち在日朝鮮人の歴史と現在を知ることにつながり、在日朝鮮人の歴史と現在を知ることがすなわち、在日朝鮮人への差別や暴力にともに立ち向かう仲間を増やすことにつながるからだ。

 実際、朝鮮学校と出会った人々の多くが、それまで持っていた自らの先入観や偏見に基づく朝鮮観を問い直し、日本政府や自治体による各種支援制度からの朝鮮学校の除外など、現在も続く日本の植民地主義の有り様に憤り、その根絶のために立ち上がっている。学校給食の対象外である朝鮮学校の子どもたちのために給食をつくって提供する。日本政府や自治体からの支援がほぼ皆無であるため厳しい運営を強いられている学校を支えようと、保護者たちが販売するキムチを買って財政を支える。生徒たちの感性豊かな絵画を多くの人々が鑑賞できるよう、各地で展示会を開催する。コロナ禍での学校支援策からも除外された朝鮮学校のために、寄付金を募って渡す。その姿を、そのつながり方を、ぜひ本誌で確認してほしい。そして、もしあなたに在日朝鮮人の知人がいなければ、ぜひ気軽に近くの朝鮮学校とつながってほしい。

 ピラミッドの土台が崩れれば、その上部も自ずと崩れていく。その日を信じて、ヘイトのピラミッドを打ち崩す場としての朝鮮学校で、今日も人々はつながっていく。

『人権と生活』57号目次

人権と生活_57号表紙

■主張 ヘイトのピラミッドを打ち崩す場としての朝鮮学校で

■【特集】朝鮮学校とのつながり方~食べる・学ぶ・交わる~

◇日本人の責任として――城北ハッキョを支える会の活動 ……大村和子

◇トングラミ(川崎朝鮮初級学校の市民給食会)の活動――朝鮮学校とまーるくつながる―― ……平賀萬里子

◇差別を許さない仲間をつくる埼愛キムチ活動! ……金範重

◇山陰学美展は、こうして始まった。そして・・・ ……三谷昇

◇授業でも交流しよう!――千葉朝鮮初中級学校―― ……堀川久司

◇共に未来をつくる『友』として――「静岡朝鮮学校・友の会」の活動から―― ……林容子

■インタビュー

◇長崎由美子さん/朝鮮学校を支援し、差別と闘う活動には普遍的意義がある

■民族教育

◇朝鮮学校の子どもたちに東京都の補助金復活を! ……猪俣京子

■トピック

◇入管特例法等の改正――特別永住者証明書等の16歳の更新時の期限超過に対する刑事罰適用はなくなることに ……金東鶴

◇ヘイトクライムを再生産する日本の差別・排外主義―MBSラジオ社への抗議運動の経験から考える ……文時弘

■寄稿

◇日本のなかの「境界」――大村入国者収容所と在日朝鮮人―― ……李英美

◇在日朝鮮学生共同研究実践プロジェクト・朝鮮人犠牲者追悼碑調査活動について ……宋知樺

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして(16)ジェノサイドと上官の責任――関東大震災朝鮮人虐殺のタブー・摂政裕仁の責任をめぐって ……前田朗

■会員の事務所訪問

◇蔡成浩さん(不動産鑑定士)/同胞社会のニーズを汲みながら、専門家集団としての役割を果たしていきたい

■会員エッセイ

◇百年の指針 ……鄭優希

■書籍紹介~人権協会事務所の本棚から~

■注目ニュース

■人権協会活動ファイル 2023・5~2023・10

■資料 在日同胞・在日外国人人口統計、在日同胞帰化許可者数統計

『人権と生活』56号目次

【56号正誤表】

1. 誤字:9頁 上段 11行目 「真理」→「心理」

2. 挿入:10頁 下段 19行目 「なくなり、自助融和会による――」→「なくなり、37年9月は自助融和会による――」

3. 誤字:11頁 注26 「35年の追悼会を最後に」→「翌36年の追悼会を最後に」

■主張 声をあげ続けよう、関東大震災時の悲劇が繰り返されることのないように

■【特集】関東大震災朝鮮人虐殺100年に際して

◇関東大震災朝鮮人虐殺に対する植民地期在日朝鮮人運動と100年目の課題……鄭永寿

◇関東大震災の流言蜚語と大阪の朝鮮人――そして最近の虐殺事件矮小化の動向に対する記憶の継承の重要性……塚﨑昌之

◇関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史的背景――日本軍隊の植民地戦争経験から……慎蒼宇

1923年9月3日の「体験」とは何であったか――ドーティー/ジョンストン日記を読む……鄭栄桓

◇東京都人権部による歴史否定と在日コリアンへの差別を理由とした「検閲・上映中止決定」が明らかにしたこと……飯山由貴

■インタビュー

◇梓澤和幸さん/「在日外国人という問題は、日本人一人一人の生き方と世界像の変革をせまっている」

■民族教育

◇広がり、積み重なる朝鮮学校差別是正勧告――国連・自由権規約委員会第7回日本審査と第4回UPR日本審査を受けて……朴金優綺

■寄稿

◇佐渡鉱山・朝鮮人強制労働の実態……竹内康人

◇『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』をめぐって―歴史と向き合うことの意義……熊野功英

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして(15)コリアン・ジェノサイドを考える――関東大震災朝鮮人虐殺100年を契機に……前田朗

■追悼

◇故・洪祥進氏を追悼して……空野佳弘・尹峰雪

■会員エッセイ

◇日本軍性奴隷制サバイバーと4・23アクション〜“出会う”と“これから”を共有する場を志向して〜……池允学

■会員訪問

◇瀬戸徐映里奈さん(近畿大学人権問題研究所所員)

■書籍紹介~人権協会事務所の本棚から~

■ニュースTOPICS

■人権協会活動ファイル 2022・11~2023・4

■資料 出生死亡(1955―2021)、同胞婚姻統計(1955-2021)、同胞離婚統計(1955-2021)

人権と生活55号 目次

‥∵‥∴∴‥∵‥∴人権と生活 55号 (2022年11月日発売)∴‥∵‥∴∴‥∵‥

************55号訂正のお詫び** **********

●p11補足資料:[誤]【1951年】4.19 日本政府、朝鮮人は「日本国籍喪失」を通達→[正]【1952年】4.19 日本政府、朝鮮人は「日本国籍喪失」を通達

●p50上段8行目:[誤]「権爀泰」→[正]「権赫泰」 ※以後同様

●p52中段:最終パラグラフ→[正]「周知のように入管特例法制定による1991年に……一本化され、協定永住者や特例永住者などのかつての「法126」該当者はすべて特別永住者に統一された。」


以上、お詫びして訂正いたします。【編集部】

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◆主張:サンフランシスコ平和条約発効70年に際して

【特集】サンフランシスコ平和条約は在日朝鮮人に何をもたらしたのか?――条約発効とその後の70年を考える

◇解放後の在日朝鮮人の国籍問題と法的地位の確立 ――対日講和条約と法務府民事局長通達……金昌宣 

◇「朝鮮国連軍」協力の論理と国籍問題 ――入国管理庁長官「6・21通達」(1952年)を読み直す……鄭栄桓

◇サンフランシスコ講和条約と在日朝鮮人の生存権……金耿昊 

◇戦後日本の教育制度と外国籍――就学義務制と「当然の法理」から考える……呉永鎬 

■民族教育 

◇九州人権協会による性教育の取り組みについて……朴憲浩、金梨美 

◇民族教育の権利拡充運動において意義ある一歩 ――朝鮮幼稚園の保護者にも「支援事業」を通した国庫補助が実現……宋恵淑

 ■講演録

 ◇田中宏さん/朝鮮学校は「炭鉱のカナリア」――あれこれ考えること

 ■寄稿

 ◇「ウトロ放火事件」被害者弁護団員としての活動報告……玄政和

 ◇定住者資格で日本に生きる在日朝鮮人として……金美恵 

■連載 差別とヘイトのない社会をめざして(14)

◇ ヘイト・クライム被害者救済のために(2)――EU政策報告書の紹介……前田朗

■会員エッセイ 

◇金紀愛さん/真にポグムチャリ(拠り所)たる同胞社会の実現を目指して

■会員訪問/鄭祐宗さん(大谷大学准教授)

■祝!開業 人権協会会員の事務所紹介

■書籍紹介―人権協会事務所の本棚から

■ニュースTOPICS

■人権協会活動ファイル

■巻末資料

◇在日同胞・在日外国人  人口統計
◇帰化許可者統計
◇共同通信記事/在日朝鮮人差別問題 前・後編 



54号 巻頭言

在日朝鮮人の司法闘争の意義を振り返って

 「在日朝鮮人の歴史は権利闘争の歴史である」というフレーズは、これまで何度も繰り返されてきたものである。事実、わたしたち在日朝鮮人の勝ち取ってきた権利は、なにひとつ自明に「与えられてきた」ものはなく、闘争を通じて自ら勝ち取ってきたものばかりである。

 解放後も、日本政府は植民地支配責任をなんら果たすことなく、むしろ日本で生活を続けた在日朝鮮人は「法の下」にあらゆる差別を受けてきた。しかし、それを決して座視せず、権利を勝ち取るためにあらゆる闘争を繰り広げてきた歴史がある。

 とりわけ、司法闘争はマイノリティが公にその差別を問い、権利のために闘うことができる数少ない手段のひとつであり、在日朝鮮人当事者はこれまで数多くの裁判を闘ってきた。     

 そして、在日朝鮮人に対する就職差別に初めて真正面から闘った「日立就職差別裁判」(1974年横浜地裁判決)や入居差別と闘った裁判など、画期的な判決を勝ち取ってきた。

 もちろん司法もまた「日本」という制度の一部でもあり、こうした「勝利」よりも数多くの不当判決を突き付けられてきたことから、日本の司法に対する不信や失望は大きい。しかし、その闘争の中で積み上げてきた議論の意義の大きさも計り知れない。全国5か所で闘われた「朝鮮高校無償化裁判」は、結果的には全地域が敗訴となったが、大阪地裁においては、朝鮮学校と民族団体である朝鮮総聯との歴史的関わりを踏まえ、民族教育の重要な意義を認めた画期的な判決を勝ち取った。また、司法闘争を通じて朝鮮学校への理解と支援の輪は地域・国を超えた拡がりをみせている。

 一方、在日朝鮮人に衝撃を与えた「京都朝鮮学校襲撃事件」(2009年)は、いまもって記憶に新しいが、現在裁判係属中である京都府宇治市のウトロ地区における放火事件(2021年)において、被告は「在日コリアンに恐怖を与える狙いがあった」と、その差別的動機を認めている。朝鮮学校補助金停止問題に端を発する「弁護士大量懲戒請求事件」(2017年~)や右翼活動家による「総聯中央会館銃撃事件」(2018年)など、現代日本において頻発している差別・排外主義の発露であるヘイトクライムは、いまなお私たち在日朝鮮人の日常生活を脅かす深刻な問題である。

 「京都朝鮮学校襲撃事件裁判」において、民事訴訟では司法が初めて人種差別撤廃条約上の人種差別に該当すると認定し、そのことが損害賠償額にも反映されるという画期的な判決(2013年京都地裁判決)が出された。しかし、刑事裁判においては、いまだ量刑判断において差別的動機を根拠に加重されたケースはほとんどないに等しく、「ウトロ放火事件裁判」においてどのような判断が示されるのか、注目されている。

 このようにみるとき、在日朝鮮人の権利をめぐる裁判は、すなわち日本の根底に流れる差別・排外主義、植民地主義と闘う裁判であり、まさに「日本の社会を映す鏡」ということができるだろう。

 これまで闘われてきた、また現在も闘われている司法闘争の意義を改めて確認しながら、あるべき社会の構築のために、差別・排外主義に屈せず、日本の植民地主義に終止符を打つべく闘っていきたい。

人権と生活54号 目次

‥∵‥∴∴‥∵‥∴人権と生活 54号 (2022年6月6日発売)∴‥∵‥∴∴‥∵‥

◆主張:在日朝鮮人の司法闘争の意義を振り返って

【特集】 排外主義・植民地主義と闘う裁判

◇表現の自由を守り、排外主義に立ち向かう―「表現の不自由展」を通してみえるもの……李春熙

◇在日コリアン弁護士への大量懲戒請求に対する損害賠償請求訴訟……金哲敏

◇群馬の森・朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑裁判……藤井 保仁

◇フジ住宅ヘイトハラスメント裁判―大阪高裁が職場で自己の民族的出自等に関わる差別的思想に晒されない人格的利益を認める……安原 邦博

◇琉球民族遺骨返還等請求訴訟について……李承現

◇映画『主戦場』裁判とは何であったか?……韓泰英

■民族教育

◇一歩前進!朝鮮幼稚園の保護者にも「支援事業」を通した国庫補助が実現……宋恵淑

◇外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議、寄附金に関する税制優遇措置の適用拡大を文科省に提言……金東鶴

■インタビュー

◇師岡康子さん/差別のない社会をつくるため法律を活用する

■寄稿

◇愛知県人権尊重の社会づくり条例について……裵明玉

◇アプロ実態調査からみえてきたもの――在日朝鮮人女性の声を社会変革のパワーに……方清子

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして( 13 )ヘイト・クライム被害者救済のために……前田 朗

■会員エッセイ

◇ウトロ地区の放火事件とウトロ平和祈念館の開館……金秀煥

■会員の事務所訪問

◇あい法律事務所  李栄愛弁護士/ 私を育ててくれた長野で、同胞たちにリーガルサービスで恩返しを

■書籍紹介―人権協会事務所の本棚から

■ニュースTOPICS 

■人権協会活動ファイル

■資料

人権と生活53号 目次

‥∵‥∴∴‥∵‥∴人権と生活 53号 (2021年11月19日発売)∴‥∵‥∴∴‥∵‥

◆主張:「除外の政策」を終わらせる力―裁判支援から日常の共有へ

【特集】地域社会と朝鮮学校―朝鮮学校支援の新たな取り組み

◇高校無償化裁判を振り返って―裁判の意義と今後の課題……金舜植

◇外国人学校における学校保健活動の取り組みと課題……呉永鎬

◇誰もがともに生きる埼玉県を目指して……猪瀬浩平

◇地域における朝鮮学校の子どもたちを守り支えるための様々なカタチ ―「幼保無償化」実現にむけた闘いのなかから ……宋恵淑

◇「ととりの会」が目指すもの―愛知における「裁判後」の朝鮮学校支援運動……三浦綾希子

◇九州朝鮮高校無償化裁判、法廷闘争とその後……朴憲浩

■インタビュー

◇筒井由紀子さん/「南北コリアと日本のともだち展」に取り組んだ20年—ともだちになれるんだということを若い人たちが体現

■寄稿

◇一世の想いをつなぐ『三つの応援』 ―「だいろく友の会」の発足……伊藤光隆

◇朝鮮学校の生徒との合同文芸文集『銀河(天の川)』を発行して……佐藤天啓

◇駒澤大学における在日朝鮮人の名前使用問題について……金誠明

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして(12) フェミサイド・ウオッチとは何か …… 前田朗

■会員エッセイ

◇イオのこれから―1996~2021、通巻300号を迎えて……張慧純

■会員の事務所訪問

◇安西社会保険労務士事務所  朴相起さん/ コロナ禍で「働き方」に転換が求められる中、高まる社労士の役割を果たしていきたい

■書籍紹介―人権協会事務所の本棚から

■ニュースTOPICS 

■人権協会活動ファイル

■資料

◇在日同胞・在日外国人 人口統計

◇在日同胞帰化許可者数統計