「人権と生活」カテゴリーアーカイブ

『人権と生活』58号目次

人権と生活_58号表紙

■主張 すべての子どもが大切にされる、差別のない社会に向けて

■【特集】外国人学校の子どもたちの権利保障に向けて~子どもの権利条約批准から30年~

◇子どもの権利条約批准30年――「こども基本法」制定などの進展と残された課題 ……平野裕二

◇「子どもの最善の利益」の観点から、朝鮮学校の子どもたちの権利保障を!――子どもの権利条約批准から30年、朝鮮学校の子どもたちの人権を守る闘いから ……宋恵淑

◇高校無償化、幼保無償化、補助金問題以外にも・・・朝鮮学校をはじめとする外国人学校処遇における様々な問題 ……金東鶴

◇本当に「誰も置き去りにしない」社会を目指して―― 地域でブラジル学校のサポートに関わってきた経験から ……河かおる

■インタビュー

◇上村和子さん/「負けない闘い」から「残る闘い」に――人権の視点から、朝鮮学校の子どもたちへの差別を許さない仕組みを日本社会に残す闘いを

■トピック

◇猛威ふるう加害史の抹消――「強制連行」否認、歴史改ざんへの同調・忖度深化 ……常盤辛

■寄稿

◇差別されない権利とは何か?――「『復刻版全国部落調査』出版差止事件」控訴審判決を例に ……河村健夫

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして(17)脱植民地フェミニズムに学ぶ ……前田朗

■会員訪問

◇梁聡子さん(成城大学グローカル研究センター招聘研究員)

■会員エッセイ

◇「人権と生活」のバランス ……朴賢憲

■書籍紹介~人権協会事務所の本棚から~

■人権協会活動ファイル 2023・11~2024・4

■資料 在日同胞出生・死亡統計(1955-2022)、在日同胞婚姻統計(1955-2022)、在日同胞離婚統計(1996-2022)、国連・子どもの権利委員会から日本政府に対し出された朝鮮学校に通う子どもたちに対する差別の是正を求める勧告と関連する子どもの権利条約条文

『人権と生活』58号 主張

すべての子どもが大切にされる、差別のない社会に向けて

日本が子どもの権利条約を批准して今年で30年になる。この条約にのっとり、すべての子どもが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、子ども政策を総合的に推進することを目的とする「こども基本法」が2022年6月に成立し、2023年4月に施行された。

しかしながら現在、同じ「学校」でも公・私立間で制度的な支援に違いがあるほか、私立の中でも、民族教育を実施している外国人学校の多くはいわゆる教育基本法上の一条校ではない各種学校の地位にあるため、一条校と同等の普通教育を行っていながらも様々な支援制度の枠組みの対象から外れている。外国人学校に通う子どもたちは、一条校に通う子どもたちと比較して、今も様々な不利益・不公平を被ることを余儀なくされている。

さらに、同じ各種学校の中でもとりわけ朝鮮学校に関しては、政治外交上の理由をもって「高校無償化」制度からも排除され、少なくない自治体において補助金が停止・減額される事態が継続している。こうした状況が構造的差別となり、現在も差別を再生産し続けている。たとえば、低所得者世帯向けの事業として、元来一条校に通う生徒の保護者を対象に各自治体で実施されてきた「私立高等学校等奨学のための給付金」は、「高校無償化」制度が始まったことにより、一条校から「高校無償化」が適用されている各種学校等にその対象が「拡大」された結果、朝鮮学校だけが排除されることとなった。その他、補助金や助成制度の対象とならないことから、学校における保健室運営や学校給食等、子どもたちが本来差別なく享受すべき環境が整わない現実がある。

「こども基本法」において、こども施策の基本理念として「全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること」と規定されているとおり、自身の国籍や人種、信条、性別、障害の有無、家庭の形態はもちろん、子どもたちが通う学校の法的区分などにもかかわりなく、あらゆる子どもたちが上記のような様々な支援制度の対象であると解釈されるべきである。

日本政府は、子どもの権利条約の遵守状況を審査する子どもの権利委員会をはじめとする国際人権条約諸機関によってたびたび出されてきた外国人学校・朝鮮学校差別是正を求める勧告に対して、これまでまったく誠実に向き合ってこなかった。そして、今も政府自ら同条約の精神を裏切り続けている。

様々な制度的枠組みから外れた朝鮮学校をはじめとした外国人学校の運営は財政的にも困難を極めている中、文字通り汗と涙の滲む自助努力と、地域社会における善意に裏打ちされた日本人支援者などによる支援活動で持ちこたえているが、こうした状況を美談で終わらせず、日本の構造的差別を打ち破るための力強い運動を展開していきたい。

人権と生活55号 目次

‥∵‥∴∴‥∵‥∴人権と生活 55号 (2022年11月日発売)∴‥∵‥∴∴‥∵‥

************55号訂正のお詫び** **********

●p11補足資料:[誤]【1951年】4.19 日本政府、朝鮮人は「日本国籍喪失」を通達→[正]【1952年】4.19 日本政府、朝鮮人は「日本国籍喪失」を通達

●p50上段8行目:[誤]「権爀泰」→[正]「権赫泰」 ※以後同様

●p52中段:最終パラグラフ→[正]「周知のように入管特例法制定による1991年に……一本化され、協定永住者や特例永住者などのかつての「法126」該当者はすべて特別永住者に統一された。」


以上、お詫びして訂正いたします。【編集部】

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◆主張:サンフランシスコ平和条約発効70年に際して

【特集】サンフランシスコ平和条約は在日朝鮮人に何をもたらしたのか?――条約発効とその後の70年を考える

◇解放後の在日朝鮮人の国籍問題と法的地位の確立 ――対日講和条約と法務府民事局長通達……金昌宣 

◇「朝鮮国連軍」協力の論理と国籍問題 ――入国管理庁長官「6・21通達」(1952年)を読み直す……鄭栄桓

◇サンフランシスコ講和条約と在日朝鮮人の生存権……金耿昊 

◇戦後日本の教育制度と外国籍――就学義務制と「当然の法理」から考える……呉永鎬 

■民族教育 

◇九州人権協会による性教育の取り組みについて……朴憲浩、金梨美 

◇民族教育の権利拡充運動において意義ある一歩 ――朝鮮幼稚園の保護者にも「支援事業」を通した国庫補助が実現……宋恵淑

 ■講演録

 ◇田中宏さん/朝鮮学校は「炭鉱のカナリア」――あれこれ考えること

 ■寄稿

 ◇「ウトロ放火事件」被害者弁護団員としての活動報告……玄政和

 ◇定住者資格で日本に生きる在日朝鮮人として……金美恵 

■連載 差別とヘイトのない社会をめざして(14)

◇ ヘイト・クライム被害者救済のために(2)――EU政策報告書の紹介……前田朗

■会員エッセイ 

◇金紀愛さん/真にポグムチャリ(拠り所)たる同胞社会の実現を目指して

■会員訪問/鄭祐宗さん(大谷大学准教授)

■祝!開業 人権協会会員の事務所紹介

■書籍紹介―人権協会事務所の本棚から

■ニュースTOPICS

■人権協会活動ファイル

■巻末資料

◇在日同胞・在日外国人  人口統計
◇帰化許可者統計
◇共同通信記事/在日朝鮮人差別問題 前・後編 



55号 巻頭言

サンフランシスコ平和条約発効70年に際して

1952年 4月28日、サンフランシスコ平和条約(サ条約)発効 のその日は、日本にとって主権を回復した記念すべき日というのが一般的な認識である。しかし、多くの人はその日が在日朝鮮人の処遇において大きな転換点となった 日であることは全く知らないであろう。

その日、在日朝鮮人は、日本国籍を「喪失」したというのが日本政府の立場である。

それによって、「在日朝鮮人は日本国籍者だから 日本の学校に行け」との「理屈」で1948・49年の相次ぐ閉鎖措置により民族学校閉鎖を進めた日本政府は、今度は、「事情の許す範囲で従前どおり在日朝鮮人を引き受けてもいいが日本の公立学校で引き受ける義務はない」と手のひらを返した。一方、在日朝鮮人が閉鎖令の嵐にも屈することなく各地で再建を進めた民族学校に対しては、学校として当然受けるべき制度的保障の対象の枠外に放置した。

また、「外国人登録令」は「外国人登録法」となるとともに指紋押捺制度が盛り込まれることとなり、生活保護もその対象者である国民ではなくなったということで「権利」としての保障された受給ではなく、あくまで「恩恵」としての受給となった。その後も国民年金制度発足時(1959年)に、その対象を日本国籍者のみにするという国籍条項を設けるなど社会保障の多くの分野で国籍の壁を設けた。またサ条約発効後に設けられた数々の戦傷者、戦没者遺族への援護制度においても同様の壁を設けた。

当時の圧倒的多数の朝鮮人は文字通り「解放民族」としての扱いを求めていた。当然のことながら日本政府はこの要求に応えるべきであった。「日本国籍を喪失した」とする在日朝鮮人に対し、日本国民でなくとも基本的人権を保障するという観点に立ち、その長期滞在により生活の本拠地が日本となっているといった実態、それに至った歴史的経緯に鑑み、社会保障をはじめ、あらゆる分野において差別することなく日本人と同等に扱うのはもちろん、日本帝国主義による植民地支配の被害者に対する原状回復義務に基づいて、喪失させられた言葉や文化の取得を積極的に保障していくといった措置がとられるべきであったことは言うまでもない。

しかし、日本政府はサ条約以降、まさにその真逆の対応をしたのである。

その後、在日朝鮮人やこころある日本の市民らの闘い、また、1979年の国際人権規約(社会権規約、自由権規約)や1981年の難民保護条約への批准もあり、社会保障における国籍条項の多くは無くなるなど数々の前進があった。

しかしながら、未だ一定年齢以上の障害者や高齢者が制度的無年金状態に置かれており、生活保護受給も「権利」ではなく「恩恵」にとどまっているなど未解決のものも少なくない。

とりわけ民族教育への差別は「高校無償化」・「幼保無償化」問題、またコロナ禍で実施された「学生支援緊急給付金」からの朝鮮大学校除外など 、最近のものだけを挙げても枚挙にいとまがない。日本の学校においても、いわゆるニューカマーへの日本語教育は論じられても民族教育の保障などは論じられない。日本の学校で民族教育を保障しないことと、民族教育を保障する朝鮮学校を各種支援制度から除外していくことは、戦後も変わらず続く同化政策の両輪である。

日本政府は、国籍問題についてはサ条約に則り、原状回復の一環だという「理屈」で国籍の一律的喪失措置をとっておきながら、喪失させられた言葉や文化の原状回復についてはひどく冷淡な態度をとり続けているのである。

このように、植民地支配期における皇民化政策と呼ばれた同化政策は、植民地を正当化するために日本国民に植え付けた朝鮮等への優越感、差別意識とともに、現在に至るまで連綿と引き継がれている。植民地を手放さざるを得なくなった敗戦後の日本においても、植民地支配を正当化し、支えた「思想」・「政策」は、敗戦や主権回復という歴史の節目節目においても清算されることのないまま、継続する植民地主義として、在日朝鮮人をはじめとする民族的マイノリティーを抑圧し、その人権を踏みにじり、その尊厳を傷つけ続けているのである。

かつては植民地支配正当化のための偏見まで政策的に植え付けられ、今はインターネット上での差別的書き込み、フェイクニュースに晒されながらも、在日朝鮮人やその置 かれてきた状況について実際にはほとんど何も知らないでいるこの日本社会で生きる多くの人々に事実をどう伝えていくかが非常に重要である。『人権と生活』 もその一翼を担っていきたい。

54号 巻頭言

在日朝鮮人の司法闘争の意義を振り返って

 「在日朝鮮人の歴史は権利闘争の歴史である」というフレーズは、これまで何度も繰り返されてきたものである。事実、わたしたち在日朝鮮人の勝ち取ってきた権利は、なにひとつ自明に「与えられてきた」ものはなく、闘争を通じて自ら勝ち取ってきたものばかりである。

 解放後も、日本政府は植民地支配責任をなんら果たすことなく、むしろ日本で生活を続けた在日朝鮮人は「法の下」にあらゆる差別を受けてきた。しかし、それを決して座視せず、権利を勝ち取るためにあらゆる闘争を繰り広げてきた歴史がある。

 とりわけ、司法闘争はマイノリティが公にその差別を問い、権利のために闘うことができる数少ない手段のひとつであり、在日朝鮮人当事者はこれまで数多くの裁判を闘ってきた。     

 そして、在日朝鮮人に対する就職差別に初めて真正面から闘った「日立就職差別裁判」(1974年横浜地裁判決)や入居差別と闘った裁判など、画期的な判決を勝ち取ってきた。

 もちろん司法もまた「日本」という制度の一部でもあり、こうした「勝利」よりも数多くの不当判決を突き付けられてきたことから、日本の司法に対する不信や失望は大きい。しかし、その闘争の中で積み上げてきた議論の意義の大きさも計り知れない。全国5か所で闘われた「朝鮮高校無償化裁判」は、結果的には全地域が敗訴となったが、大阪地裁においては、朝鮮学校と民族団体である朝鮮総聯との歴史的関わりを踏まえ、民族教育の重要な意義を認めた画期的な判決を勝ち取った。また、司法闘争を通じて朝鮮学校への理解と支援の輪は地域・国を超えた拡がりをみせている。

 一方、在日朝鮮人に衝撃を与えた「京都朝鮮学校襲撃事件」(2009年)は、いまもって記憶に新しいが、現在裁判係属中である京都府宇治市のウトロ地区における放火事件(2021年)において、被告は「在日コリアンに恐怖を与える狙いがあった」と、その差別的動機を認めている。朝鮮学校補助金停止問題に端を発する「弁護士大量懲戒請求事件」(2017年~)や右翼活動家による「総聯中央会館銃撃事件」(2018年)など、現代日本において頻発している差別・排外主義の発露であるヘイトクライムは、いまなお私たち在日朝鮮人の日常生活を脅かす深刻な問題である。

 「京都朝鮮学校襲撃事件裁判」において、民事訴訟では司法が初めて人種差別撤廃条約上の人種差別に該当すると認定し、そのことが損害賠償額にも反映されるという画期的な判決(2013年京都地裁判決)が出された。しかし、刑事裁判においては、いまだ量刑判断において差別的動機を根拠に加重されたケースはほとんどないに等しく、「ウトロ放火事件裁判」においてどのような判断が示されるのか、注目されている。

 このようにみるとき、在日朝鮮人の権利をめぐる裁判は、すなわち日本の根底に流れる差別・排外主義、植民地主義と闘う裁判であり、まさに「日本の社会を映す鏡」ということができるだろう。

 これまで闘われてきた、また現在も闘われている司法闘争の意義を改めて確認しながら、あるべき社会の構築のために、差別・排外主義に屈せず、日本の植民地主義に終止符を打つべく闘っていきたい。

人権と生活54号 目次

‥∵‥∴∴‥∵‥∴人権と生活 54号 (2022年6月6日発売)∴‥∵‥∴∴‥∵‥

◆主張:在日朝鮮人の司法闘争の意義を振り返って

【特集】 排外主義・植民地主義と闘う裁判

◇表現の自由を守り、排外主義に立ち向かう―「表現の不自由展」を通してみえるもの……李春熙

◇在日コリアン弁護士への大量懲戒請求に対する損害賠償請求訴訟……金哲敏

◇群馬の森・朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑裁判……藤井 保仁

◇フジ住宅ヘイトハラスメント裁判―大阪高裁が職場で自己の民族的出自等に関わる差別的思想に晒されない人格的利益を認める……安原 邦博

◇琉球民族遺骨返還等請求訴訟について……李承現

◇映画『主戦場』裁判とは何であったか?……韓泰英

■民族教育

◇一歩前進!朝鮮幼稚園の保護者にも「支援事業」を通した国庫補助が実現……宋恵淑

◇外国人学校の保健衛生環境に係る有識者会議、寄附金に関する税制優遇措置の適用拡大を文科省に提言……金東鶴

■インタビュー

◇師岡康子さん/差別のない社会をつくるため法律を活用する

■寄稿

◇愛知県人権尊重の社会づくり条例について……裵明玉

◇アプロ実態調査からみえてきたもの――在日朝鮮人女性の声を社会変革のパワーに……方清子

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして( 13 )ヘイト・クライム被害者救済のために……前田 朗

■会員エッセイ

◇ウトロ地区の放火事件とウトロ平和祈念館の開館……金秀煥

■会員の事務所訪問

◇あい法律事務所  李栄愛弁護士/ 私を育ててくれた長野で、同胞たちにリーガルサービスで恩返しを

■書籍紹介―人権協会事務所の本棚から

■ニュースTOPICS 

■人権協会活動ファイル

■資料

人権と生活53号 目次

‥∵‥∴∴‥∵‥∴人権と生活 53号 (2021年11月19日発売)∴‥∵‥∴∴‥∵‥

◆主張:「除外の政策」を終わらせる力―裁判支援から日常の共有へ

【特集】地域社会と朝鮮学校―朝鮮学校支援の新たな取り組み

◇高校無償化裁判を振り返って―裁判の意義と今後の課題……金舜植

◇外国人学校における学校保健活動の取り組みと課題……呉永鎬

◇誰もがともに生きる埼玉県を目指して……猪瀬浩平

◇地域における朝鮮学校の子どもたちを守り支えるための様々なカタチ ―「幼保無償化」実現にむけた闘いのなかから ……宋恵淑

◇「ととりの会」が目指すもの―愛知における「裁判後」の朝鮮学校支援運動……三浦綾希子

◇九州朝鮮高校無償化裁判、法廷闘争とその後……朴憲浩

■インタビュー

◇筒井由紀子さん/「南北コリアと日本のともだち展」に取り組んだ20年—ともだちになれるんだということを若い人たちが体現

■寄稿

◇一世の想いをつなぐ『三つの応援』 ―「だいろく友の会」の発足……伊藤光隆

◇朝鮮学校の生徒との合同文芸文集『銀河(天の川)』を発行して……佐藤天啓

◇駒澤大学における在日朝鮮人の名前使用問題について……金誠明

■連載

差別とヘイトのない社会をめざして(12) フェミサイド・ウオッチとは何か …… 前田朗

■会員エッセイ

◇イオのこれから―1996~2021、通巻300号を迎えて……張慧純

■会員の事務所訪問

◇安西社会保険労務士事務所  朴相起さん/ コロナ禍で「働き方」に転換が求められる中、高まる社労士の役割を果たしていきたい

■書籍紹介―人権協会事務所の本棚から

■ニュースTOPICS 

■人権協会活動ファイル

■資料

◇在日同胞・在日外国人 人口統計

◇在日同胞帰化許可者数統計

53号 巻頭言

「除外の政策」を終わらせる力―裁判支援から日常の共有へ

2021年7月27日。最高裁は、日本政府による「高校無償化」(以下、「無償化」)制度からの朝鮮高校除外問題に関する広島朝鮮学園と同学園の元生徒たちの上告を棄却し、上告審として受理しない決定を行った。これによって、13年1月に大阪、愛知から始まって全国五ヶ所で繰り広げられた朝鮮学校及び同校生徒・卒業生らによる「無償化」裁判はすべて終了した。

ここで改めて、生徒たちがなぜ「無償化」裁判の原告として立ち上がったかについて考えてみたい。

「これはお金の問題ではありません。民族の尊厳の問題です。私たちを人として見てください」

14年12月、「無償化」裁判の原告の一人でもあった朝鮮高校卒業生が、面前に立ちはだかる文部科学省のビルを見上げながら叫んだ言葉だ。

原告ごとに裁判に込めた想いは当然異なろうが、「無償化」裁判に関する報告集会等の場で、多くの朝鮮高校生や卒業生が同様の発言をしていたのを耳にされた方も多いだろう。そう考えると、朝鮮学校に通う朝鮮人であるというそれだけの理由で差別を受ける、その不条理な現実に反対の声を上げ、在日朝鮮人としての尊厳を守るのだという強い決意が、生徒たちが立ち上がった理由の一つに挙げられるのではないだろうか。

また、多くの生徒・卒業生は口を揃えて「自分と同じような思いを後輩たちにはさせたくない」と述べていた。自らがたたかうことで差別をなくし、差別を受ける苦しさ、つらさ、やるせなさを後輩たちには味わわせたくないという想い。そこには、日本の植民地支配からの解放直後から、先代が日本政府の弾圧にも屈さず文字通り「死守」してきた朝鮮学校という歴史的な存在を、後代のため、自分たちが継いで守らなければならないという固い信念が表れていたように思う。

このように、朝鮮高校生たち自らが主体となって立ち上がり、差別の是正と尊厳の回復、民族教育の固守を求めて日本の司法に訴えたという事実自体が、在日朝鮮人史上初の出来事として歴史に刻まれるものであり、「無償化」裁判の最も大きな意義の一つに挙げられるだろう。

そして、このような原告たちの声は、文部科学省の冷たく硬い外壁にはね返されるだけのものではなかった。その声に対して共感し、支持し、応答する人々が全国各地で共に声を上げ、原告や朝鮮学校の力になろうと無数の努力が傾けられてきた。

裁判の弁護団や支援団体の結成と拡大、原告・保護者・弁護団・学校関係者・支援団体間の連携と協力、その数々の道のりはどれひとつ取っても決して平坦ではなかっただろう。しかし、原告たちと気持ちを共にし、差別を許さず正義を求める、その一点において多くの人々の心が一つになり、その連帯の波はやがて北南朝鮮、海外へも波及した。そこに民族や国籍、性別、年齢等の垣根はなく、八年半の長きにわたった裁判が常に熱を帯びてたたかわれたのは、このように幅広く多様な連帯があったがゆえだったといえる。

そして裁判が終わった今、その熱は冷めることなく、朝鮮学校支援のための新たな努力が各地で様々に続けられている。コロナ禍での募金活動、出張授業の実施、「無償化」適用や補助金支給を求める行政交渉、朝鮮学校の歴史を学ぶセミナーや焼肉交流会の開催、掃除や備品整理等の美化活動、生徒たちの文集発行、保健室運営の支援、反ヘイト条例制定に向けた学習会の開催、財政支援のためのキムチ販売……その形がいかに多様でアイデアに溢れたものであるかについては、本号を読み進めるごとに実感いただけるはずだ。

言うまでもないが、裁判が終わったからといって日本政府の差別がなくなったわけでも、正当化されたわけでもない。今も変わらず朝鮮高校生たちは「無償化」制度から除外されており、幼保無償化制度からの朝鮮幼稚園の除外やコロナ禍での朝鮮学校差別など、日本政府は差別を是正するどころか、今も新たな差別を次々と生み出している。この朝鮮学校を標的にした「除外の政策」を終わらせるために必要不可欠なもの―それは共に差別に反対し、朝鮮学校を守り続けていく仲間たちの存在であるだろう。 疑いに満ちた眼差しでしか朝鮮学校を見られない、植民地主義的思考にとらわれた日本の司法が決めた「敗北」を嘆くよりも、笑顔や涙あふれる日常を共有し、共に抵抗することができる確かな繋がりを得られた「勝利」を歓びたい。差別に抗する人々の歴史は、今日もあちこちで紡がれていく。

52号 巻頭言

反レイシズムの連帯を拡げよう

米国において、白人警官による黒人への暴力・殺人事件はこれまでも繰り返されてきたが、2020年5月のジョージ・フロイド殺害事件を機に端を発し、全米に巻き起こった直接行動運動であるBML(Black Lives Matter)運動は世界へと拡がりをみせ、今なお世界で人種差別/レイシズムの暴力が跋扈する現実を眼前に突き付けた。

このBML運動は、日本のメディアでも大きく取り上げられたが、あたかも日本には人種差別/レイシズムが存在しないかのように、それらの多くは日本における人種差別/レイシズムを省みるものではなかった。

実際はどうか。日本政府は、歴史的に在日朝鮮人に対する差別・弾圧政策をとり続けてきたが、在日朝鮮人差別のみならず、アイヌ差別、琉球・沖縄人差別はすべて人種差別/レイシズムといえる。国連人種差別撤廃委員会から、これらの差別が人種差別撤廃条約上の人種差別にあたるとして、日本政府は繰り返しその是正を求める勧告を受け、実効的な差別禁止の立法措置が求められている。それにもかかわらず、前述のように日本に人種差別が存在しないかのような認識が支配的である原因について、梁英聖氏は「日本社会に人種差別は存在する。見えない。なぜだろうか。わかりやすい原因の一つは日本政府によって人種差別が隠されていることだ。国内で頻発している人種差別について、日本政府は調査もせず、統計もとっていない。もし交通事故や犯罪が、調査もされず統計も取られない場合、交通事故や犯罪は存在じたいが政府によって隠されてしまう。ちょうどこれと同じことが人種差別では長年にわたり続けられている。これは政府がヘイトクライム統計を公表する米国や英国の場合、政府がレイシズムを隠すことができないことと対照的である」(ちくま新書『レイシズムとは何か』)と述べる。

これに加え、日本政府は朝鮮高校・朝鮮幼稚園を「無償化」制度から除外し、コロナ禍における学生支援制度から朝鮮大学校学生を排除するなど、自ら率先して在日朝鮮人に対する差別政策をとり続けている。

このような日本政府の姿勢は地方政府にも波及し、朝鮮学校への補助金を削除する自治体が増加、昨年にはさいたま市がコロナ感染防止対策の一環として市内の幼稚園、保育園に備蓄用マスクを配布した際、同市内の朝鮮幼稚園を配布対象外とするなど(大きな批判の声があがり、その後配布が決定された)、日本において在日朝鮮人差別は構造化され、繰り返されてきた。

さらに、こうした政府による差別政策は、日本社会における在日朝鮮人に対する差別のハードルを下げてきた。たとえば80・90年代にはチマ・チョゴリ切り裂き事件など、朝鮮学校を標的にしたレイシズム犯罪が頻発、2000年代には「在特会」など過激化した排外主義者たちが日常的にヘイトスピーチを繰り返し、京都朝鮮第一初級学校(当時)を児童がいる中で襲撃(2009年)するなど、在日朝鮮人社会に大きな衝撃を与えた。昨今では、大企業であるDHCが公式サイトにおいて、代表取締役自ら「サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです。DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本人です。」(2020年11月)といった露骨な民族差別発言を繰り返し、これらの発言を掲示し続けた。これについて社会的に大きな批判があがる中、同社と協定関係にある複数の自治体や関係企業からも批判を受け、同社は今年5月末にようやく同発言を削除したが、6月4日現在、公式サイトにおける経緯説明や謝罪は一切ない。近年、反差別運動の具体的成果として「ヘイトスピーチ解消法」(2016年)が施行されたが、限界も多く、未だ日本社会において反レイシズム、反差別の社会的規範が定着しているとはいえない。

梁英聖氏は、こうも述べる。「レイシズムとは、人種化して、殺す(死なせる)、権力である」(前掲書)。在日朝鮮人集住地区である大阪の鶴橋駅前では、中学生が在日朝鮮人に向け「南京大虐殺ではなく鶴橋大虐殺を実行しますよ!」と叫ぶヘイト街宣が行われたが(2013年)、「ヘイト暴力のピラミッド」の有名な図が指し示すように、偏見や先入観はやがて差別行為や暴力にいきつき、最終的にはジェノサイドへと道をひらいていく。反レイシズムは、わたしたち在日朝鮮人の命にかかわるきわめて具体的な課題である。

グローバルな反レイシズム運動に学びながら、日本における反レイシズムの連帯を拡げ、差別と暴力の根絶に向けて、進んでいきたい。

人権と生活52号 目次

‥∵‥∴∴‥∵‥∴人権と生活 52号 (2021年6月11日発売)∴‥∵‥∴∴‥∵‥

◆主張:反レイシズムの連帯を拡げよう

【特集】レイシズムとしての在日朝鮮人差別

◇レイシズムとしての在日コリアン差別をどのように分析するか──「在日特権」を生み出すレイシズム法制としての1952年体制を再論する……梁英聖

◇インターネット上のヘイトスピーチ……趙學植

◇「日本にも人種差別はある!」 ── 闘うNGOからの報告……小森恵

◇在日朝鮮人と日本の社会保障制度 ── 国籍条項を問う……金静寅

■インタビュー 

◇前田朗さん/自覚なきレイシストの国で ── 四半世紀にわたる国際人権活動の経験から

■民族教育

◇朝鮮幼稚園が子ども子育て新制度の支援の枠内に ── 幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外問題、あらたな局面を迎える……宋恵淑

■寄稿

◇マイクロアグレッションの視点から考える在日朝鮮人差別……朴利明

◇「敵認定」の制度化とその帰結 ── 朝鮮学校と日本のレイシズム……ハン・トンヒョン

◇「14歳に満たない外国人」の起源をたどる ── 外国人登録の年令的免除者に関する覚書……鄭栄桓

■会員エッセイ

◇在日コリアン女性のハラスメント事例集を発刊して……河庚希

■会員の事務所訪問

◇SHIN司法書士事務所 辛彰男さん/同胞の目線で仕事ができる同胞社会の「かかりつけ司法書士に」

■書籍紹介―人権協会事務所の本棚から

■ニュースTOPICS 

■人権協会活動ファイル

■資料