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MBSラジオの番組内における暴言問題について

 ※2023年4月3日追記有

 本年2月21日、関西のAM放送局であるMBSラジオの番組『上泉雄一のええなぁ!』において、ゲストスピーカーであった上念司氏が、朝鮮学校に対して「スパイ養成的なところ」と発言するなど、朝鮮学校に通う生徒をはじめ在日朝鮮人の人権を脅かし、またそれを扇動するような、到底看過できない発言を繰り返し、番組においてそのまま放送されました(詳細は以下「質問状」参照)。

 今回、それが個人ではなく極めて公共性の高い民間放送局の番組においてなされたことは、その社会的影響から極めて重大な問題があると考え、人権協会傘下の関西3団体(大阪人権協会・兵庫人権協会・京都協議体)の連名で3月3日付で質問状を送り、社の立場を確認したところ、MBSラジオ社からは、3月14日付の回答が送られてきました。

 MBSラジオ社の回答によれば、本協会からの質問状を受けて、①3月10日の当該番組内の放送において「お詫び」をし、②同3月10日の1日の間、「お詫び」(以下画像参照)をMBSラジオサイト内の当該番組の紹介ページで掲載したこと、③YouTube上で配信されている当該放送分につき、「スパイ養成的なところもあったり」という発言部分のみをカットしたこと(配信自体は継続)が確認されました。

 しかし、本回答における、当該発言が「子どもたちの人権を守る」論旨からなされたとの主張は到底首肯しうるものではなく、その他質問にも真正面から答えるものではないこと、かつ「お詫び」の内容も不十分であるのみならず掲載が1日に限られるものであったこと、さらにYouTube上の配信については当該発言をカットするのみでなんの説明も付記されていないことなど、あまりに対応として不誠実かつ不十分なものであると言わざるをえません。

 したがって、人権協会傘下の関西3団体は当該「質問状」およびMBSラジオ社の回答および現在の対応を公表し、その問題性を改めて喚起するとともに、引き続きMBSラジオ社の誠実な対応を求めます。

2023年3月15日

※ ※ ※ 以下、4月3日 追記 ※ ※ ※

 MBSラジオ社の不十分な対応を受けて、改めて「抗議・要請書」を3月24日、MBSラジオ社役員との直接面談の場において提出しました。「抗議・要請書」に、その後の経緯も反映されています。以下、 「抗議・要請書」 原文を転載します。

抗議・要請書

3月24日

                              在日本朝鮮人大阪人権協会
                             在日本朝鮮人兵庫人権協会
                           在日本朝鮮人人権協会京都協議体

私ども在日本朝鮮人人権協会は、本年2月21日に放送された貴社ラジオ番組『上泉雄一のええなぁ!』のゲストスピーカーであった上念司氏が、下記の通り発言(一部抜粋)した件につき、3月3日付の質問状を送付し、貴社の立場を確認するとともに抗議をしてまいりました。

その後、貴社は、質問状について3月14日付で回答し、当該回のオンライン配信について一部のみをカットし、3月10日のわずか1日のみ「お詫び」を番組ホームページ内に掲載しました。

しかし、貴社から送付された上記回答は、私どもの質問に明確に答えるものではないばかりか、当該発言内容が、総じて朝鮮学校の名誉を毀損し、朝鮮学校ひいては在日朝鮮人への攻撃を煽るメッセージ性をもった極めて危険な発言であるという深刻な問題性をまったく認識しておらず、公共性・公益性を有する放送局としての責任を受け止めるものではありませんでした。とりわけ、上念氏の当該発言は「子どもたちの人権を守る」ことが論旨であるとした貴社の見解はおよそ首肯できるものではなく、上念氏、ひいては自社を擁護するための詭弁としか受け止めることができません。

また、番組ホームページ上に掲載された「お詫び」の内容も、あくまで「誤解を与える内容」であったことについてのみ言及する極めて不十分な内容であるのみならず、その「お詫び」すら、1日のみ掲載するというあまりに不誠実な対応でした。

そうした対応を受け、私どもが一連の事実を公表した後、貴社に対する批判の声はより大きくなり、各メディアにおける報道においても大きくとりあげられたことから、貴社は、番組ホームページに掲載していた「お詫び」を再掲し、インターネット上で配信していた当該回を停止するに至りました。

貴社の説明によれば、「朝鮮学校生徒らへの二次被害を防止するために1日のみのお詫びの掲載をした」とのことですが、およそ理由になっていないばかりか、「二次被害」が起こりうるような危険性を認識しているのであれば、より誠実に、より具体的な対応をとるべきでした。それにも関わらず、上記の対応以外なんらの措置もとられてこなかったことから、3月20日に実施された貴社との直接面談の場で、朝鮮学校保護者とともに改めて抗議の意思を伝えるとともに、翌日の上念氏出演回における本人による謝罪の意の表明、また質問状への明確な回答および再発防止のための取り組みの実施の要請を行いました。

しかしながら、謝罪の意の表明はおろか、居直るような発言を繰り返す上念氏を当該番組に通常通り出演させるなど、むしろ貴社は「お詫び」に表明していた立場すら放棄し、上念氏の発言を追認する立場に立ったものと判断せざるをえない対応に終始しました。

高まる貴社への批判の声を背景に、3月23日、貴社は上念氏の番組降板を公表しましたが、同日、当該番組Twitterアカウントにて、改めて上念氏の発言が「ヘイトスピーチにはあたらない」との見解を表明し、上念氏が自身のYouTubeチャンネルにおいて「最後まで守ってくれたスタッフの皆さん、上泉雄一さんありがとう!」と書いているとおり、貴社は上念氏を降板させる判断をとりつつも、上念氏と認識においてその差はなく、今後も同様の発言を「論評」として許容する立場であることは明白です。

いうまでもなく、私どもは、上念氏の降板によって問題が解決したとは全く考えていません。かつての京都朝鮮学校襲撃事件やウトロ放火事件をみても明白なように、在日朝鮮人を標的としたヘイトクライムが頻発している昨今の社会状況の中で、公共性の高い放送局においてこうした発言が跋扈することが、いかに在日朝鮮人、とりわけ朝鮮学校の保護者や生徒たちの日常に恐怖をもたらしているか、今一度、想像力を働かせて抗議の声を誠実に受け止め、公共性・公益性を有するマスメディアとしての責任を果たすべきことを貴社に繰り返し強く求めます。

そこで、私どもは、本日の貴社との直接面談の場において、改めて本件について強く抗議するとともに、以下、要請いたします。

併せて、貴社が具体的にどのように取り組まれるのかについて、本年3月末日までに書面による回答を求める次第です。

要 請

  • 本件に関する事実の経緯、および在日朝鮮人への差別を許さず、いかなるヘイトも容認しないという貴社の立場を明確にしたステートメントを発表し、当該番組ではなく貴社のホームページ上に一定期間掲載すること。
  • 公共性・公益性を有するマスメディアとしての責任と使命を自覚し、社内教育をはじめとした、再発防止のための取り組みを継続的に行うこと。

以上

 

当該「抗議・要請書」に対し、3月31日、MBSラジオ社より本協会に直接回答が手渡され、その内容に関する説明がありましたので、これを公表します。

 回答にあたり、3月24日の直接面談で表明された保護者など当事者の声を社として重く受け止める中で、朝鮮学校・民族教育に対する無理解があったことを表明し、その「知見を深める努力」を具体的に進める旨の表明がありました。しかし、依然として上念氏の発言については「ヘイトスピーチにはあたらず論評である」との見解を撤回していません。

 また、要請項目に掲げた、社としての反差別・反ヘイトのステートメントの発表も否定する内容であり、およそ不十分な内容と判断せざるをえません。これについては、「コンプライアンス憲章」がすでに掲示されている旨の回答がありましたが、今回の事態はこの憲章が掲げられている中で起こったことであり、本件についての具体的な対応としてはなんの説明にもなっていません。再発防止策として、本件の個別具体的な経緯を反映させたステートメントが発表されてこそ、はじめて意味のあるものとなるはずです。

 回答および説明を受け、MBSラジオに限らず、今後マスメディア全般において同様の事態が発生しないよう、BPOへの申し立てをする判断をし、3月31日付の申立書を4月1日に送付しました。

 引き続き、今回の問題について注視いただければと思います。

2023年4月3日