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『人権と生活』59号 主張

結成30周年を迎えて

 1994年2月に結成された在日本朝鮮人人権協会は今年で結成30年を迎えた。

 この間、既に鬼籍に入られた崔一洙初代会長、柳光守元会長、趙鏞復元会長、白文鉉元副会長をはじめとする多くの方々が、同胞専門家による同胞のための人権擁護、法律・生活サポートを行う組織の結成とその発展のために心血を注がれた。

 結成当初わずか2人だった弁護士会員が今では70人に達しようとしていることをはじめ、有資格者会員は200人を優に超えるに至るなど、会員数も大幅に増えた。

 そしてこの間、資格を持つ会員はその持てる専門知識を活かして同胞たちへの無料法律相談活動を各地で展開し、研究者や活動家の会員は会報『人権と生活』においての論考や様々な実践活動を通して多くの問題提起を同胞社会・日本社会に投げかけるなどして、会員それぞれがその力を発揮し、同胞の人権・生活状況の改善に努めてきた。

 とりわけ民族教育への露骨な制度的差別をはじめとする同胞への不当な差別や弾圧に対しては多くの取り組みを行ってきた。「高校無償化」制度からの朝鮮学校排除など未だ解決できていない問題も少なくないが、大学入学資格問題やそれに続く形で取り組んだ朝鮮大学校生及びその卒業生の国家資格試験の受験資格問題では、在学中における税理士試験・保育士試験の受験をできるようにするなど、多くの成果を勝ち取った。最近においても幼保無償化制度の代替措置(いわゆる「新支援策」)の朝鮮幼稚園適用やさいたま市による朝鮮幼稚園へのマスク不支給撤回、大阪のMBSラジオにおける朝鮮学校への差別妄言への抗議行動により、同社の謝罪および再発防止措置を勝ち取るなど、会員たちが大きな役割を果たしている。

◇◇◇

 人権協会が結成された1994年は日本が子どもの権利条約に批准した年でもある。

 昨年にはこの条約の精神に則った「こども基本法」も施行されたが、朝鮮学校をはじめとする外国人学校に通う子どもたちへの差別は未だ無くならず、「高校無償化」排除やそれに連動するように拡がった朝鮮学校に対する自治体の補助金停止措置など、子どもの権利条約に明らかに抵触する差別が今なおまかり通っている。

 また、今年の通常国会においては入管法が「改正」され、技能実習制度の改編等に伴い永住者資格を持つ者の増加が見込まれるからという「理由」から、永住資格の取り消し要件が大幅に拡大された。

 「わが国に永住する異民族が、いつまでも異民族としてとどまることは、一種の少数民族として将来困難深刻な社会問題となることは明かである。彼我双方の将来における生活と安定のために、これらのひとたち(在日朝鮮人)に対する同化政策が強調されるゆえんである。すなわち大いに帰化してもらうことである。・・・・・ここでも、南北のいずれを問わず彼らの行う在日の子弟に対する民族教育に対する対策が早急に確立されなければならない」

 これは、日本と韓国が国交を結んだ1965年に内閣調査室(現在は内閣情報調査室)が発行した『調査月報』7月号の中に記されたものだが、当時、国交樹立にあたって在日朝鮮人に対し永住資格を認めざるを得ない(とはいってもこのときの「協定永住」は韓国の在外国民登録をした者に限るものだったが)と考えた日本政府内の本音を如実に顕している。そしてこの年の年末「朝鮮人として民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められない」とする文部事務次官通達が、都道府県知事らに向けて出された。

 外国籍の永住者増加への拒否感、それと表裏の関係を持つ民族教育への否定的対応、この日本政府の姿勢が60年前と大きくは変わっていないことを昨今の状況は雄弁に物語っている。

 とりわけこの30年間は、群馬の森の朝鮮人追悼碑撤去や小池都知事による関東大震災時の朝鮮人犠牲者を追悼する式典への追悼文送付拒否、チマチョゴリ切り裂き事件、在特会による朝鮮学校襲撃事件、ウトロ放火事件に象徴されるように、歴史修正主義、また、それに連動した排外主義が官民問わず蔓延る時代でもあった。

◇◇◇

 このように人権協会の前には30年前の結成時に勝るとも劣らない課題が山積している。この間の多くの方のご尽力・ご支援への敬意と感謝の思いを胸に刻みながら、これまでの経験を糧にして今後より一層在日朝鮮人の権利擁護と生活支援を軸にした人権活動に邁進したい。

10/12(金)「朝鮮学校の子どもたちに学ぶ権利を!2018東京集会」にぜひご参加ください

◇ 名 称     「朝鮮学校の子どもたちに学ぶ権利を! 2018年東京集会」

◇ 日 時     10月12日(金)18:30~20:30 (開場 18:00)

◇ 参加費    500円

◇ 会 場     連合会館 2階大会議室(東京都千代田区神田駿河台3-2-11)

◇ 内 容 

①講演:鄭栄桓さん(明治学院大学准教授)「『4.24教育闘争』が問いかけるもの―歴史と現在の架橋のために―」

②大阪高校「無償化」裁判 高裁判決報告

③ジュネーブでの人種差別撤廃委員会日本審査(8月)に参加した代表の報告

◇ 主 催:朝鮮学園を支援する全国ネットワーク、日朝学術教育交流協会、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会

 

人権理事会(HRC)

▼普遍的定期的審査(UPR)

-UPR日本審査第4サイクル(第42会期)に提出したNGOレポート

  • 「日本における人種差別:朝鮮学校に通う子どもたちを中心に」(在日本朝鮮人人権協会、2022年7月14日)[英語版][日本語版

-UPR日本審査第3サイクル(第28会期)に提出したNGOレポート

  • 「マイノリティの子どもたちに対する教育機会の提供における差別――朝鮮学校の子どもたちを中心に」(在日本朝鮮人人権協会、2017年3月30日)[英語版][日本語版

ーUPR第28会期プレセッションに向けて作成したファクトシート

『人権と生活』43号 巻頭言

在日同胞の生活を守り、権利の拡充をめざして

年金受給に必要な保険料納付期間を25年から10年に短縮する「年金機能強化法改正案」が成立する運びとなった。来年の10月分から新たな対象者に支給されるとのこと。

当初は、消費税10%引き上げと同時に実施される予定ではあったが、引き上げが延期になり、その実施が不透明であったところ、世論の要望も強く、政府が「無年金問題の解決は喫緊の課題」と判断し、先行実施されることとなったのである。これにより、これまで「無年金」だった人たちや年金をあきらめていた人たちが救済されることになり、在日同胞の中にもようやく老齢年金を受給できるようになる人も多いと思われる。一定年齢以上の同胞の中には「カラ期間(合算対象期間)」がある人もいるので、これを機会に是非、自分自身や父母の年金記録を調べておくことを勧めたい。(※年金制度の詳細は本サイト特設ページへ)

今、日本政府にとって「喫緊の課題」となっている「無年金問題」は、「国籍条項」によりそもそも年金制度から排除されてきた経緯がある私たち在日朝鮮人にとっては、日本政府により長年放置されてきた問題であり、生存権に関わる切実な問題であった。

年金だけではない。日本の植民地支配により、多数の朝鮮人が生活の手段を奪われ、渡日を余儀なくされ、そして侵略戦争遂行のため膨大な数の朝鮮人が労働者として日本に連行され、炭鉱、鉱山、港湾などで酷使された。敗戦後は「第三国人」として無権利状態で放置され、帰国もままならず生活困窮にあえぐ中、社会保障の諸制度に「国籍条項」が設けられ、その適用から除外された。

国民健康保険、公営住宅の入居、児童扶養手当しかり、さらにはさまざまな国家資格、日本育英会の奨学金などの分野にも「国籍条項」が設けられ、在日同胞は生活の基本的要求とも言える医療や住まい、養育、教育の保障から排除された。生活保護においても、それは戦後の混乱期の衛生と治安上の理由から、「生活保護法に準ずる」行政措置として認められたにすぎず、決して権利として認められたものではなかった。さらに出入国管理令における退去強制事由に生活保護の受給があげられるなど、日本政府は特殊な歴史的事情を有する在日朝鮮人に対して、戦後補償どころか、一貫して抑圧と追放の政策をとり、生存権を脅かしさえしてきたのである。

このような社会保障の部門で「国籍条項」がほぼ撤廃されたのは1981年。しかしこれは国際社会からベトナム難民の受け入れを迫られた日本政府が、国際人権規約、次いで難民条約を批准したことによるところが大きく、日本政府が在日同胞に対する処遇を改めたからではなかった。その証拠に、一定年齢以上の障がい者、高齢の同胞が引き続き無年金のまま放置されるという問題が残っている。これらの同胞たちの無年金問題は、このたびの改正法でも救済されることはなく放置されたままである。

在日同胞は、長きにわたるこのような制度からの排除に加え、根強い民族蔑視により生存権を脅かされてきたが、それは戦後70年以上が経過した今もなお継続している。

朝鮮高校の「無償化」除外しかり、朝鮮学校の補助金問題しかり、朝鮮籍者のみなし再入国許可制度除外などの制度上の差別があり、昨今のヘイトスピーチ、ヘイトデモや、それらを背景にした職場や学校でのいじめ、差別落書きなど、民族差別が横行している。外形が変わっても、これらが在日朝鮮人としての存在を否定し、かつ生存権を脅かすものであることに変わりはない。

1世、2世の先代たちはこれまでこのような日本政府による「同化」と「抑圧」という在日朝鮮人政策に抗い、日本の心ある人たちと連帯し同胞の生活と権利を守るための活動を果敢に展開してきた。その過程で獲得してきた権利はたくさんある。「日本政府が自ら進んで保障した権利は何もない」。これは高齢の1世の言葉である。私たちは先代の意思を引き継ぎ、在日同胞の生活を守り、よりいっそうの権利の拡充をめざし大胆に活動をしていきたい。

 

『人権と生活』42号 巻頭言

先達の精神を引き継ぎながら

2015年という年は、12月28日の日本軍「慰安婦」問題に関する「韓日合意」によって幕を閉じた。問題の解決に真摯に取り組んできた当事者や支援者をはじめ、多くの人々を落胆させ、そして憤激させたこの電撃的ともいえる「合意」は、被害者たちを再び冒涜し、真の問題解決をより遠のかせるものであった。これは、自国のリーダーシップのもと、米日韓がタッグを組んで東北アジアの「国際秩序」を守るべきとする米国に背中を押されての「野合」以外の何物でもなかった。朝鮮民族にとって解放70年であった年の瀬になされたこの「野合」は、明くる2016年にも暗雲を投げかけた。

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現在、この日本において、朝鮮と名のつくものなら、まさに何をしても構わないというような状況が、その深刻度を増しながら続いている。

街頭で「朝鮮人首吊レ毒飲メ飛ビ降リロ」「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」と書いたプラカードを持ってヘイトスピーチを喚き散らす者だけを念頭に述べているのではない。

政治家や官僚が、「対北制裁」の名のもと、在特会らのような下品な言葉は使用せず、「上品」にもっともらしい「理由」を織り交ぜながら、率先して在日朝鮮人への人権侵害をしている。

再入国許可取消者の拡大、さらには各地の入管事務所や空港の入管ゲートにおいて、特別永住者の「国籍・地域」欄が「朝鮮」表示の者に対し、「北朝鮮へは渡航しません」という『誓約書』を求めるということまで起こっている。また東京都や大阪府など、一部自治体が停止している朝鮮学校関連の補助金については、他の自治体に対しても支給を見直せといわんばかりの『通知』を文科省が出すということまでもが起こっているのだ。

自らの祖国への往来という、人としての基本的な要求までにも制限を加え、あるいは脅かし、在日同胞の血と汗と涙の結晶と言える朝鮮学校を兵糧攻めにするかのような一連の動きは、「日本で出生した在日朝鮮人の人々のような永住者に関して、出国前に再入国の許可を得る必要性をその法律から除去することを強く要請する」とした自由権規約委員会の勧告(1998年)や、「地方自治体に対して、朝鮮学校への補助金の支給を再開し、または維持するよう促すことを締約国に奨励」するとした人種差別撤廃委員会の勧告(2014年)に、ことごとくその真っ向から反するものであることは言を俟たない。

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こういった状況は、ちょうど半世紀前の1965年当時を彷彿させる。「韓日基本条約」が締結された年だ。

その時もまさに米国に強く背中を押されながら、清算はおろか、植民地支配責任自体をも曖昧にしたままの野合的な妥結がなされたが、その直後、在日朝鮮人への人権を脅かす動きが露骨に展開されることになる。

「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、わが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められないので、これを各種学校として認可すべきでない」とした1965年の文部省事務次官通達と、それに続いて数年に亘り国会に上程された朝鮮学校への抑圧装置としての外国人学校法案、また1969年から、これも数年に亘り上程された管理・抑圧機能の強化を図った入管法案(当時は日本に暮らす外国人の9割弱が朝鮮人)。

「歴史は繰り返す」というローマの歴史家の言葉が、否が応でも脳裏に浮かぶ、そんな状況である。

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しかし、私たちは、さらに次のことを想起すべきであろう。

在日朝鮮人の一世・二世が、1965年の文部事務次官通達をはねのけ、多くの都道府県で、朝鮮学校の各種学校認可を勝ち取り、その10年後の1975年には、朝鮮学校のあるすべての都道府県が各種学校認可をするに至ったことを。さらには外国人学校法案も入管法案もはねのけ、廃案に追い込んだことも。そして、そのために支援してくれた多くの良識ある日本人の存在も。

不当な人権侵害には決して屈せず闘い抜いた先達の精神を引き継ぎ、反動化する時代状況に抗していきたい。

12・5 国連・人権勧告の実現を! 集会・デモ

「12・5 国連・人権勧告の実現を! 集会・デモ」のお知らせです。

*詳細は、以下のURLよりご覧ください。

http://jinkenkankokujitsugen.blogspot.jp/2015/10/blog-post.html

◆日時:2015年12月5日(土)

13:15 集会スタート、15:00 デモ出発

◆会場:代々木公園野外ステージ

◆集会での発言:師岡康子さん(弁護士)

        伊藤和子さん(弁護士)

        寺中誠さん(大学教員)

        賛同団体からの発言

◆主催:国連・人権勧告の実現を!実行委員会

◆連絡先 電話:090-9804-4196(長谷川)

    メール:jinkenkankokujitsugen@gmail.com

    ブログ:http://jinkenkankokujitsugen.blogspot.jp/

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新在留管理制度解説DVD

 「新たな在留管理制度-外国人登録法廃止・入管法改定~その隠された本質と注意すべき問題点を探る~」

入管法改定解説DVD表紙     入管法改定解説DVDキャプチャー

企画・制作:在日本朝鮮人人権協会(2012年7月制作)

頒価:500円

時間:18分


2012年7月9日をもって外国人登録法は廃止され、改定「入管法」「入管特例法」が施行されました。具体的に、私たち在日同胞の生活はどのように変わるのでしょうか。
特別永住者証明書って?提示義務は残るの?引越しの際に注意すべき点は?「みなし再入国許可」って一体なに?
そんな素朴な疑問に当協会会員の裵明玉弁護士がわかりやすく丁寧に解説します。

*ご注文はお問い合わせから