改定入管法(「新たな在留管理制度」)に関するQ&A

リーフレット(裏)

リーフレット(表)
※Q3のA(回答)の補則説明
「特別永住者証明書」の場合は、「有効期間満了後7回目の誕生日」が次回更新期限ですが、在留資格が永住者の「在留カード」の場合は、「在留カードの交付の日から起算して7年を経過する日」が更新期限になります(誕生日は関係ありません)。たとえば、2015年8月15日が在留カード交付日の方は、2022年8月15日が期限となります。

★さらに詳しくは下記をお読みください★

●[朝鮮新報] 「改定入管法・入管特例法と在日同胞(上・中・下)」

●「人権と生活」39号収録<「新たな在留管理制度」を正しく理解するためのQ&A>抜粋

問① 私は前回の切り替えから今年七年目の誕生日を迎えたのですが、誕生日から二ヶ月ほど経ってから気づき慌てて役所に電話したら二〇一五年七月八日までに更新すればいいと言われました。本当に大丈夫なのでしょうか?

 

はい。新制度施行に伴う経過措置として、施行後三年間の猶予期間が設けられています。新制度は二〇一二年七月九日に施行されたので、その期限が二〇一五年七月八日ということになるのです。

 

問② 今頃になって法務省から一六歳時の更新をするようにとの通知が来ました。これまで行政からの案内が無かったのでうちの子どもは更新をしないまますでに一六歳を過ぎていますが大丈夫でしょうか?

 

確かに更新義務違反状態で刑事罰の対象にはなっており、心配されるのは当然ですよね。ただ心配なので更新を控えるのではなく、早い目に更新を行うことをおすすめします。現時点では、法務省も通知を今年(二〇一四年)の九月一〇日まで送っていなかったこともあり、刑事罰を適用するような運用は行わないと言っているからです。

 

問③ 私が持っている外国人登録証明書には「次回確認(切替)申請期間」として「二〇一九年七月四日から三〇日以内」となっています。新制度施行に伴い設けられた三年の猶予期限である二〇一五年七月八日までに更新しなくてもいいということでしょうか?

 

新制度の施行(二〇一二年七月九日)直前に切り替えられたのですね。

あなたが「特別永住者」なら、二〇一五年七月八日までに更新しなくても結構です。

ただし、注意点があります。あなたの外国人登録証明書には「二〇一九年七月四日から三〇日以内」と書かれているにもかかわらず、更新義務期間は誕生日である二〇一九年七月四日の二ヶ月前(一六歳時の更新の場合は六ヶ月前)から誕生日当日までとなります。誕生日が来てから、ではないのです。お間違いのないようお気をつけください。

また、もし、あなたが「永住者」の場合は、二〇一五年七月八日までに更新しなければなりません。

「特別永住者」の場合、一六歳あるいはその後の七年ごとの誕生日の到来日が二〇一五年七月八日以降の場合はその時まででよいのですが、「永住者」は一六歳時の場合はその誕生日か、二〇一五年七月八日のいずれかのうち早く到来する方の日までとなっており、それ以降の七年ごとの更新は、七年目の誕生日が、その前であっても後であっても二〇一五年七月八日までとなるのです。また「特別永住者」とは違い「永住者」らは申請窓口も市区町村役場ではなく、入管の事務所に行かなければなりません。

なお、新制度の施行以降、更新前の外国人登録証明書は法規定によって「特別永住者証明書」(永住者の場合は「在留カード」)とみなされます。

 

問④ 「特別永住者」の常時携帯義務はなくなったと聞いたのですが、提示義務はあると聞きました。持っていないときに提示を求められたらどうなるのですか?

 

ごもっともな心配です。法務省は、ホームページで下記のように説明しています。

 

Q5 特別永住者については、旅券及び特別永住者証明書の携帯義務がなくなりますが、例えば、住居地が大阪の者が、所用で東京に来ていた際に警察官から職務質問を受けて、特別永住者証明書の提示を求められた場合に、当該証明書は自宅に置いてきたままであり、持っていれば提示を行っていたものであり、提示を拒むつもりはない場合であっても、罰則の対象となるのですか。

 

A. 特別永住者証明書の提示拒否罪が成立するのは、権限を有する者から提示を求められたにもかかわらず、提示を拒否する旨の意思を外形的に明らかにしたような場合や、合理的期間内に敢えて提示をしないような場合等、その意思をもって提示を拒んだといえる場合です。

この合理的期間は、具体的事案における個別の事情に応じて判断されることになりますが、その事情の例としては、特別永住者証明書の提示を求められた場所とその保管場所との位置関係、提示の支障の有無及びその程度等が考えられます。なお、特別永住者証明書でなくとも、当該特別永住者の身分関係等の確認が可能な他の代替的な手段がある場合には、あえて特別永住者証明書の提示を求めないことも考えられます。

(http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_2/q-and-a.html#q43-a)

 

注意すべき点としては、提示を拒む意思を明確にした場合は提示拒否罪が成立するということです。事実通り「今、持っていないので見せられない」と言うことは問題ないでしょうが、たとえば感情にまかせて「見せない」「いやだ」とだけ言ってしまうと警察署に連行される可能性まであるのです。

また「合理的期間」についての説明がなされていますが、これでは解釈の余地が広すぎてよく分かりませんね。その分、警察官等に裁量の余地が大きく与えられ、権限濫用につながりかねません。法務省は、より具体的な基準を示すとともに、濫用の防止につとめるべきといえます。

 

問⑤ もうすぐ生まれてくる子どもの名前を考えているのですが「正字」でないと駄目だと聞きました。「正字」とは何ですか? またどうやって確認すればいいのですか?

 

新制度に伴い、在日朝鮮人をはじめ外国籍者も住民基本台帳制度の対象となりました。

法務省はこれに伴い、二〇一一年一二月二六日付の告示(http://www.immi-moj.go.jp/topics/pdf/honbun.pdf)によって「正字」の範囲を定め、それ以外の漢字については「正字」に置き換えるとしました。法務省はそのホームページで「市区町村からの御意見(市区町村の業務(住民票、国民健康保険、国民年金等の各種システム)で今後利用が見込まれる氏名表記との連携を図る必要がある旨の御意見)を踏まえて整理したもの」と説明していますが、外国籍者にも新たに作成されることになった住民票以外はこれまでも連携が図られてきたのであり、従来の外国人登録制度上で使用されてきた一部の漢字を使えなくするということは、たとえ少数ではあったとしても変更を余儀なくされる当事者の人権を軽視したものといわざるをえません。なお、「正字」であるかどうかの確認については、

入国管理局正字検索システム(http://lapse-immi.moj.go.jp:50122/)を利用するのがよいでしょう。またインターネットを使える環境にないような方は役所に問い合わせるのが早くて確実でしょう。

 

問⑥ 通称名を変更することはできるのでしょうか?

 

まず、新制度で発行されることになった「特別永住者証明書」と「在留カード」には通称名称が記載されません。一方、住民票には通称名が記載されます。また任意で発行してもらえる住民基本台帳カードにも本名と併記して通称名を載せることが可能です。

さて、その住民基本台帳制度上で登録できる通称名ですが、簡単に変えることはできません。

―既存の通称名から新たな通称名に変えることは原則として認めない

―新たに登録する場合でも、勤務先や学校等の発行する身分証明書等の客観的資料を複数提出することを原則とする

―ただし結婚相手や養子縁組により親となった者の通称名の苗字を使う様な場合はこれらの原則の例外とする

このような指導が総務省から各自治体に出されているからです(「住民基本台帳事務における通称の記載(変更)における留意事項について」二〇一三年一一月一五日 総務省自治行政局外国人住民基本台帳室長)。

 

問⑦ 新制度では「特別永住者証明書」「在留カード」ともにローマ字が基本になると聞きましたが、皆がそうなるのでしょうか? 漢字表記はどうなるのでしょうか?

 

たしかにローマ字が基本となりましたが、外国人登録で漢字が使われていた人たちには漢字も併記されます。また、新制度施行以降に漢字圏の国から日本に来た人も漢字名を反映することが可能です。

また、ローマ字については、そのスペルを基本的には旅券で確認することになります。ただ在日朝鮮人のうち韓国旅券を持っていない人は確認手段が無いということになります。朝鮮民主主義人民共和国の委任により朝鮮総聯が発給する同国の旅券は不当にも未だ「有効な旅券」として扱われていないため行政窓口でそれを提示し、スペルはここに書いてあるとおりだと言っても受け付けられません。

したがってスペルの確認手段が無いとされる在日朝鮮人は、漢字表記のみとなります。ただしこのことによって特段の不利益はないといってよいでしょう。

 

問⑧ 「みなし再入国許可」について教えてください。

 

「みなし再入国許可」を導入し、「特別永住者」なら二年以内、「在留カード」を持つ者なら一年以内の海外渡航については、入管事務所に行かなくても「特別永住者証明書」もしくは「在留カード」と「有効な旅券」を出国時に所持していれば、再入国許可を出したものと「みなす」とし、いちいち再入国許可をとらなくてもよいこととなりました。しかし、同じ在日朝鮮人の中でも「韓国旅券」を所持しない者はこの制度を利用できないという問題が残っています(詳しくは一三ページ)。

またこの制度を利用できる人の場合でも注意しておくべきことがあります。それは一般の数次再入国許可(新制度では「特別永住者」の場合、四年から六年に伸長。相当な理由があれば海外で一年延長許可も取れる)とは違い、たとえ重病を患ったといったような事情であろうと延長は一切できず、二年(「在留カード」を持つ者なら一年)を過ぎれば、在留資格を失うという規定になっていることです。ですから「みなし再入国許可」の期限ぎりぎりに日本に戻るような計画は、リスクが高いので避けるか、数次再入国許可を取って出国すべきでしょう。

さらに「特別永住者」の場合、常時携帯義務が無くなった関係で日常的に「特別永住者証明書」を持ち歩いていない人も多いと思いますが、「みなし再入国許可」で出国しようとして空港で、「あっ、特別永住者証明書を忘れた!」ということがないよう注意が必要です。

 

問⑨ 引っ越しをするとき新制度では入管(特例)法上の届出義務と住民基本台帳法上の届出義務があると聞きましたがどうすればいいのですか?

 

入管特例法および入管法では住所変更後一四日以内に届け出を新住所地の市区町村窓口にしなければならないとしており、住民基本台帳法では転入、もしくは転居(同一市区町村内の住所変更の場合)後、一四日以内に届け出をしなければならないと規定しています。

新制度では二度手間にならないように「特別永住者証明書」あるいは「在留カード」を提示して市区町村で転入、転居届をしたときは入管特例法、入管法上の申請義務も同時に果たしたものとするという規定が設けられています。ただし、住民基本台帳法では、他の市区町村に引っ越しするときはあらかじめ転出届をすることも義務づけられていますので注意が必要です。

なお、住民基本台帳法では住所変更に関する届け出を定められた期間内にしなかった場合については「五万円以下の過料」という行政罰が設けられているにすぎないのに対し、入管特例法および入管法では住所変更の遅延は「二〇万円以下の罰金」という刑事罰が設けられています。

もっぱら外国人を対象にしてきた法令と長らく日本人のみを対象にしてきた法令における罰則の開きは差別としか言いようがなく、ついうっかりしただけで刑事罰の対象という現行法は速やかに改正されるべきです。

 

問⑩ 相続手続きをするのに外国人登録原票が必要といわれましたが、どうやって入手すればいいのでしょうか?

 

制度が変わるまでは市区町村の窓口で被相続人、相続人それぞれの外国人登録原票記載事項証明書(かつては「登録済み証」「済み証」と言っていたもの)を取り寄せることができました。新制度では外国人登録原票がすべて法務省に回収されたため、市区町村でこれを受け取ることができなくなりました。

そこでその原票自体を法務省に申請することになります。申請は郵送で可能です。

被相続人の原票請求は、死亡した人と同居していた親族、死亡した人の配偶者(内縁の妻を含む)、直系尊属、直系卑属または兄妹姉妹、これらの法定代理人が可能です。インターネットを使用可能な方は検索サイトで「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しの交付請求について」と入力すれば法務省の当該サイトにすぐにアクセスでき、そこで申請に関する情報、申請用紙を入手することができます。

相続人の原票請求は相続人各自(本人が未成年者又は成年被後見人の場合には、その法定代理人)が申請することになります。インターネットを使用可能な方は検索サイトで「外国人登録原票に係る開示請求について」と入力すれば法務省の当該サイトにすぐにアクセスでき、そこで申請に関する情報、申請用紙を入手することができます。

インターネットにアクセスできない方は法務省(℡03-3580-4111)に電話し、問い合わせてください。

(事務局 金東鶴)