2003年6月5日

質  問  書

文部科学大臣 遠山 敦子 殿               

外国人学校・民族学校の問題を考える弁護士有志の会   

共同代表 弁護士 新美  隆(東京弁護士会)  

共同代表 弁護士 丹羽 雅雄(大阪弁護士会)  

 私たちは在日外国人の人権問題にかかわっている弁護士で、現在、外国人学校の生徒及び卒業生より日本の大学入学資格の問題などで相談を受けています。

  貴省が本年3月6日に出された、外国人学校ないし民族学校のうちインターナショナルスクール16校に限って日本の大学の入学資格を認めるとの方針は、同月28日に凍結され、民族学校を含めて再検討すると発表されています。

 私たちは、1998年2月の日本弁護士連合会の勧告書の指摘しているとおり、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約などの国際条約はもとより、憲法第26条1項の教育を受ける権利および憲法第14条1項の平等権保障の観点から、外国人学校の高等学校相当課程(以下「高校相当課程」という)修了生に対しても大学入学資格を認めるべきだと考えております。これらのことは、2001年8月国連社会権規約委員会「最終見解」懸念事項32項で「民族学校などが、たとえそれが国の教育課程に沿うものであっても、公的には認められず、それゆえ、中央政府の補助金も受けられず、大学入学資格受験資格も与えられない事実についても懸念を有する」と指摘されるなど、国際諸機関の日本政府に対する度重なる勧告でも指摘されていることです。

 かかる観点からすると、現行の大学入学資格に関する諸規定及び取り扱いには、多くの法的問題点があると言わざるを得ません。そこで、下記の法的問題点につき、貴省がどのようなお考えなのかをうかがいたく、この質問書を出す次第です。

 本年6月30日までに、文書にて下記連絡先まで回答をいただきますよう、申し入れます。

(学校教育法施行規則第69条1号関係)

1、  学校教育法第56条1項は、「大学に入学することのできる者は、高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者若しくは通常の課程による十二年の学校教育を修了した者(通 常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者を含む。)又は文部科学大臣の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする」と定めており、同法施行規則69条は、これをうけて「大学入学に関し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」として、1号ないし6号で具体的に定めている。1号では、「外国において、学校教育における十二年の課程を修了した者又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定した者」として、前段については、その教育内容を一切問わず、大学への入学資格を認めている。

   この趣旨は、各国の学校教育制度が、その国の歴史や文化などを反映し、それぞれの国において様々であり、大学入学資格についても、学校の修了をもって付与する国や一定の資格を有することが求められている国など区々あり多様であることから、各国の歴史や文化の多様性を尊重する国際的観点より、国ごとに異なる教育内容に立ち入ることなく、履修した正規の学校教育の年数が日本の高等学校卒業と同様の12年であることをもってその水準を担保する、いわゆる「課程年数主義」の考え方から認めていると理解してよいか。

2、  1号の趣旨が上記のとおりとすると、本国政府又は本国の政府により認定を受けた団体が、当該国の学校教育における十二年の課程と同等の課程を有するものとして認定した外国人学校の高校相当課程を修了した者についても、課程年数主義の見地から1号前段に基づいて大学の入学資格を認められないか。
3、  仮に、1号前段に基づいて外国人学校高校相当課程修了者の入学資格を認めることができないとした場合、やはり課程年数主義の見地から、1号後段の「これに準ずる者で文部大臣の指定した者」として認めることができるのではないか。もし認められないとした場合は、その理由も併せ回答願いたい。

(同施行規則第3号関係)

4、  施行規則69条3号では、「大学入学に関し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」として、単に「文部科学大臣の指定した者」と規定し、これを受けて文部省告示第47号(1948(昭和23)年5月31日、大学入学に関し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者を指定)は、21号(1985年(昭和60年)9月に追加)において「専修学校の高等課程の修業年限3年以上の課程で文部科学大臣が別に指定したものを文部科学大臣が定める日以後に修了した者」としている。文部科学大臣が具体的な指定をなすにあたって、同年9月19日付け文部省(当時)高等教育局長通知により「大学入学資格に係る専修学校高等課程の指定に関する実施要項」が定められ、その第3項「指定の要件」において、@修業年限3年以上、A卒業に必要な総授業時数が2590単位時間以上(当初は2800単位時間)、B卒業に必要な普通科目(国語、社会、数学、理科又は外国語)の総授業時数は420単位時間以上であること、などを定めている。

  1985年(昭和60年)の改正前、専修学校高等課程修了生は、大学入学資格が認められず、外国人学校高校相当課程修了生とおなじく施行規則69条4号の「大学入学資格検定」に合格しなければならなかったところ、「大学入学の機会を拡大するとともに、後期中等教育の多様化・活性化に資することを目的」(上記文部省(当時)高等教育局長通知)として、上記要項により大学入学資格が認められているのである。ところが、朝鮮高級学校をはじめとする外国人学校高校相当課程の多くは同実施要項に定める要件を充たしており、かつ、専修学校よりもその教育課程の編成・内容は学校教育法1条の高等学校に近いのにもかかわらず、日本の大学入学資格が認められない理由は何か。

5、  上記通知の「大学入学の機会を拡大するとともに、後期中等教育の多様化・活性化に資する」という目的からすると、外国人学校高校相当課程についても、施行規則69条3号によって指定することがむしろ適切であると考えられるが、適切でないと考える場合はその理由を示されたい。
6、  学校教育法第82条の2は、専修学校の定義として、「(前段略)我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く」と規定しているが、外国人学校を、あえて専修学校から除外する理由は何か。
7、  1965(昭和40)年の文部事務次官通達(文管振第210号)の二(3)において「朝鮮人を含めて一般にわが国に在住する外国人をもっぱら収容する教育施設の取り扱いについては、国際親善等の見地から、新しい制度を検討し、外国人学校の統一的取り扱いをはかりたい」との見解が示され、翌年、専修学校制度及び外国人学校制度の創設を内容とする学校教育法改正案が準備されているが、こうした経緯から、専修学校と外国人学校とを区別するため、前記除外規定が規定されたのではないか。
8、  前記外国人学校制度創設を内容とした法改正が今日に至るまでなされていないにもかかわらず、現行の専修学校の定義に外国人学校除外規定が存続している理由は何か。

(同施行規則第6号関係)

9、  施行規則69条6号は、「大学入学に関し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者」として、「その他大学において、相当の年齢に達し、高等学校を卒業したものと同等以上の学力があると認めた者」を規定し、入学資格を独自に認定する権限を大学に付与していると解されるが、貴省の見解としてこの権限の有無ないし範囲の広狭について、大学の国立・公立・私立といった設置主体の違いによって異別はあると考えるか。

10.  国立大学のうちで施行規則69条6号に基づいて外国人学校の卒業生について入学資格を認めている例があるか。
11.  貴省の行政実例として、かつて佐賀大学学生部長からの問い合わせに対して大学学術局長 名で回答し(昭和40年9月17日学大248号)、施行規則69条4号(現行6号)の運用については、「大学入学者選抜実施要項趣旨徹底協議会」において、国立大学においては受験生に対し大学入学資格検定(いわゆる大検)受検を指導するよう、文部省(当時)が要請していることに関連し、「大学入学資格については、全国統一的なものとして文部大臣の行う大学入学資格検定があり、各大学が個々に実施する必要がない。また、大学が独自に資格認定を実施することは、その程度、取扱に差を生じるおそれがある。(中略)以上の理由により、国立大学にあっては大学独自の入学資格認定はできるかぎり避けるよう指導しているが、公立及び私立の大学にあっても、国立の大学に準じて取り扱われるよう各大学に要請している」「大学入学資格検定規程制定以降特に国立大学にあってはこの制度を活用するよう指導している」と回答している。また、旧4号(現行6号)に関し、「原則的には死文化するものと考えて差支えない」(死文化とは、同号の文言上は、大学独自に入学資格を認定する権限を認めているにもかかわらず、大検を受検させることで結果的に大学独自の認定ができないことを指していると思われる)と明確に回答している。以上の見解は現在も変更されていないのか。
12、 前項の見解が現在も変更されていない場合、前項の行政指導は、各大学に独自の入学資格を認めるべきではないという考え方に立脚しており、施行規則69条6号の各大学に独自の入学資格認定権を付与するという立法趣旨を没却ないしこれに背馳するものではないか。
13、 施行規則第70条は「大学の専攻科又は大学院への入学に関し大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めれられる者」について定め、1999(平成11)年文部省令34号により、6号として「大学院において、個別の入学資格審査により、大学を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、22歳に達したもの」との規定を新設し、この条項により、国立大学を含めた各大学は、朝鮮大学校及びアメリカの大学日本校の卒業生に入学資格を認定している。とすると、同様に、施行規則第69条に「大学において、個別の入学資格審査により、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認めた者で、18歳に達したもの」との規定を新設し、外国人学校の高校相当課程修了生に対し、各大学独自の入学資格認定権限を明示することもできるのではないか。昨年7月、文部科学省は、総合規制改革会議がインターナショナルスクール修了者に大学入学資格を認めるよう答申したことを受けて、大学入学資格の緩和を検討し、上記のように省令改正を行う方針を固めたと報道されたが(毎日新聞2002年7月2日)、この改正を行わなかった理由は何か。
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