「民族学校出身者の受験資格を求める国立大学教職員の声明」賛同者に送ったメール(8.6)
◆文部科学省の新たな方針

 すでにマスコミで報道されたように、8月6日、文科省は中教審大学分科会で「大学入学資格の弾力化について」を明らかにし、その中で外国人学校卒業者の
受験資格認定に関して次のような新たな方針を示しました。

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「大学入学資格の弾力化について」

1.外国人学校の取扱い[教育の国際化等の観点]
(1)国際的な評価団体(WASC、ECIS、ACSI)の評価を受けた外国
      人学校の卒業者に入学資格を付与
   →文部科学省告示で指定
(2)外国において当該国の正規の教育課程(12年)と同等の学校と位置づけら
   れている外国人学校の卒業者に入学資格を付与(→各国の大使館等を通じ
   て公的に確認
   →文部科学省告示で指定

2.大学による個人の多様な学習歴等の個別審査
 大学の個別審査により高校卒業と同等以上の学力があると認められる者に入学
 資格を付与
 →多様な学習歴、実績を各大学で適切に審査。
 【学習歴等の例】
  ・各種の学校などでの学習歴
  ・社会での実務経験
  ・大学の科目等履修生としての実績など
 →省令改正、大学に周知

3.8月〜9月に省令・告示改正→2003年4月入学者から対応
 ※大検は、高校卒業レベルの認定試験との性格に転換する方向で検討。

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 要するに、外国人学校に関しては、次のようになります。

(1)欧米の評価機関の認定を受けているインターナショナルスクールや、本国政府に認定されていることが公的に確認できる外国人学校については、「学校単位」ですべての国立大学の受験資格を認める。
(2)朝鮮学校の卒業者は「個人単位」で個別大学の判断に委ねる(朝鮮学校に関しても「公的に確認」できれば、上記1−(2)に該当するものとみなされる可能性はありますが、現状では極めて困難な見通しです)。

◆私たちの見解

 今回の方針は、外国人学校卒業者が大検を経ることなく国立大学を受験する資格を認めるという点で一歩前進であると考えます。アジア系外国人学校、ブラジル人学校を排除しようとした文科省の当初の方針を改めさせたことは、春以来、「すべての外国人学校卒業者に受験資格を!」の声をあげつづけた運動の成果といえます。
 しかし、朝鮮学校と他の外国人学校との間に格差に設けたことは、大きな問題と評せざるをえません。私たちとしては、一定の修業年限や授業時間数を基準として認定すること、具体的には専修学校(高等課程)が大学入学資格付与の指定を受ける際の基準(後述)を準用すべきということを要求し続けていきたいと考えています。
 また、すでに今年4月には、欧米系インターナショナルスクールに対しては税制上の優遇措置(寄付金を税金から控除)を認めたにもかかわらず、その他の外国人学校にはそれを認めないことが決められています。そのほかにも、国・地方公共団体による補助金問題、看護学校などへの入学資格問題なども残されています(なお、本日付の『毎日新聞』朝刊では、京都市が外国人学校への助成金交付や免税措置を一般の私立学校と同様にすることを文科省に要望したと報じられています)。
 日本にある外国人学校の法的位置づけを明確にし、滞日・在日外国人の教育権を保障するための道のりはまだ遠いと評せざるをえません。
 文部科省のホームページ(http://www.mext.go.jp/b_menu/public/index.htm)にはパブリックコメント実施要項が出ています。それぞれの立場でご意見をお寄せいただければ幸いです。

◆資格認定への積極的な取り組みを呼びかけます

 以上のような問題点をはらみながらも、今回の方針にともなって各大学は受験資格を認定することができるようになりました。すべての国立大学の門戸開放を目指して、私たちは、教職員自身がそのための努力をすべきであると考えます。
すでに朝鮮学校卒業者・卒業予定者から国立大学に対して受験資格認定書交付申請が出されていることを考えるならば、速やかに資格認定のための制度を整備する必要があります。
 各大学での判断に当っては、多くの場合、認定の基準となる内規を設ける必要が生じると考えられます。その際に、ひとつの目安として、専修学校高等課程が大学入学資格付与の指定を受ける際の基準を準用するということが考えられます。
この基準に従うなら、朝鮮学校などの生徒は受験資格を得るための要件を充分に満たしているということになります(資料1,2参照)。
 さらに、内規の作成にあたって、「個人認定」の形式であったとしても、一度卒業者の受験を認めた学校については、次年度以降の入試要項に学校名を明記することが必要と考えられます。そうすることによって、受験生が資格審査で排除されるという不安を軽減することができるからです。私立大学では、すでにこの方式を採用しているところがあります(資料3参照)。
 上記の方式はもちろん唯一のものではありませんが、学内で議論がなされる場合のひとつのたたき台となるのではないかと考えています。資格認定のための手続きは各大学によって異なるものと思いますが、入試関係委員会、教授会など資格認定に関わる機関に対して、ご意見を提起していっていただければ幸いです。

◆今後の推移に注目を

 文科省の最終的な方針決定は、8月〜9月に省令・告示の改正という形で示されることになります。外国人学校の間にこれ以上の格差が生まれないよう、文科省の措置を注視し続けたいと考えています。
 この間お寄せいただいたご支援、ご協力に感謝するとともに、引き続き、この問題に関心をお持ち下さるよう、お願いします。

 水野直樹・駒込武

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◇資料1:専修学校が大学入学資格付与の指定を受ける要件(「大学入学資格に係る専修学校高等課程の指定に関する実施要綱」
1985年9月19日高等教育長裁定、2002年4月1日改正)
(1)修業年限3年以上
(2)卒業に必要な総授業数が2590単位時間以上
  (1単位時間は50分を標準として計算する)
(3)普通科目(国語、社会、数学、理科、外国語)の総授業時数が420時間以上、ただし、105単位時間までは教養科目で代替することができる。
(4)普通科目を担当する教員の相当数が高等学校の普通免許状を所有していることが望ましい。

◇資料2:朝鮮学校高級部カリキュラム(2003年度カリキュラムにもとづく試算)
(1)修業年限:3年
(2)総授業時数 2850単位時間
   1学年 1050単位時間
   2学年 1050単位時間
   3学年  750単位時間
(3)普通科目中「日本語」「数学」「英語」の単位時間数
   日本語 文系 358 理系 320
   数学  文系 262 理系 439
   英語  文系 381 理系 320
  (合計) 文系 1001 理系 1079
  (このほか朝鮮語、理科、社会などの普通科目もありますがが、計算が複雑なので除外しました。)

◇資料3:立命館大学2001年度募集要項(抜粋)
「出願資格」
(1)高等学校および、中等教育学校を卒業した者または2001年3月卒業見込みの者
(2)通常の課程による12年の学校教育を終了した者または2001年3月修了見込みの者
(3)学校教育法施行規則第69条の規定により、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者、または2001年3月31日までにこれに該当する見込みの者(本学で出願資格を認定した学校は、朝鮮学校、韓国学校、カナディアン・アカデミーハイスクール、東京中華学校、神戸マリスト国際学校、福岡インターナショナルスクール、横浜インターナショナルスクールです。)
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