■税制上優遇措置における差別是正などを求める人権救済申立
去る3月13日、東京朝鮮学園、神奈川朝鮮学園、横浜山手中華学園の各理事長及び保護者代表が申立人となり、日弁連に対して、税制上優遇措置における差別是正などを求める人権救済申立を行いました。
ご存じのとおり、学校校舎の新増築などに対する寄付が所得控除や損金扱いになる 「指定寄附金制度」の対象として、インターナショナルスクールや東京韓国学園、東京独逸学園などいくつかの外国人・民族学校は認められており、また、教育や科学の 振興,文化の向上といった「公益の増進」に寄与すると認められた法人である「特定公益増進法人」の対象として、多くのインターナショナルスクールが認めれれ、同じ く税制優遇を受けていますが、朝鮮学校と中華学校はそのどちらからも排除されてお ります。
その排除されている理由を端的に言えば「短期滞在者が通っている外国人学校は日本社会にとって 『公益』で、永住者が通っている学校は『公益』ではない」ということです。
この「とんでもない差別」を是正すべく、今回人権救済申立を行った次第です。
ちなみに朝鮮学校と中華学校が一緒に人権救済申立をするのは今回は初めてです。
また今回の申立は、人権協会会員の洪正秀弁護士、金舜植弁護士、金哲敏弁護士、李春 熙弁護士が代理人となっております。
以下に申立の趣旨など一部内容をお知らせします。
△人権救済申立書(一部)
2006年3月13日
日本弁護士連合会 御中
申立人代理人弁護士 星 正 秀
同 弁護士 金 舜 植
同 弁護士 金 哲 敏
同 弁護士 李 春 熙
〒231−0862 横浜市中区山手町43−2
申立人 学校法人横浜山手中華学園
〒114−0033 東京都北区十条台2−6−32
同 学校法人東京朝鮮学園
〒221−0844 横浜市神奈川区沢渡21
同 学校法人神奈川朝鮮学園
〒231−0862 横浜市中区山手町43−2
同 横浜山手中華学校家長会
〒112−0011 東京都文京区千石4−27−10
同 東京朝鮮学校オモニ会連絡会
〒221−0844 横浜市神奈川区沢渡21
同 神奈川朝鮮学園オモニ会連絡会
(中略)
被申立人 内閣総理大臣 小泉 純一郎
同 文部科学大臣 小坂 憲次
同 財務大臣 谷垣 禎一
申 立 の 趣 旨
日本弁護士連合会は,当該関係各機関に対し,各中華学校,各朝鮮学校及び同学校 に通う児童生徒及びその保護者に対する以下の人権侵害を是正するよう勧告する。
1 各中華学校,各朝鮮学校を,「指定寄附金」制度の対象として認めること
2 各中華学校,各朝鮮学校を,「特定公益増進法人」として認めること
3 各中華学校,各朝鮮学校を,日本私立学校振興・共済事業団の「私立学校受配 者指定寄付金制度」及び「融資制度」の対象として認めること
4 朝鮮高級学校の卒業(見込み)生について,大学や専門学校(専門課程の専修 学校)における個別の入学資格審査なしにその入学資格を認めること
申 立 の 原 因
第1 はじめに
日本弁護士連合会は,1998年2月,日本国政府に対し,朝鮮学校等に対する大 学入学資格・助成制度などの差別的な取り扱いが日本に在住する外国人の母国語ない
し自己の国ないし民族の文化を保持する教育に関する重大な人権侵害にあたるとし て,人権侵害を除去し,その被害を回復する適当な処置をとるよう勧告した。
その後,大学入学資格問題の緩和,インターナショナルスクールに対する税制上の 優遇策,各種学校及び学校法人認可基準の緩和(その結果,浜松市卸本町所在のペ
ルー人学校「ムンド・デ・アレグリア学校」が南米系外国人学校としては全国ではじ めて,県から準学校法人認可を得た。)など,外国人学校・民族学校に対する差別的
な取扱いを除去するうえで一定の前進はあった。
しかし,外国人学校・民族学校を学校教育法第1条と同等の,あるいはそれに準じる扱いをするまでには到底いたっていない。
それどころか,近時の外国人学校・民族学校に対する日本政府の政策は,同じ外国人学校・民族学校のなかにおいて,インターナショナルスクール等と中華学校,朝鮮学校などの一部の外国人学校・民族学校を区別して,二重の基準を用いて,一部の外国人学校・民族学校に対する差別的取扱いを正当化しようとしている。
以下,1998年2月の日弁連勧告以降に生じた新たな差別的取扱い(あるいは以前からあったが未解決の問題)について詳述する。 (以下略)