子どもたちの安全と健康etc.

校門前、通学路における道路安全対策問題

地域にある日本の小学校の校門に至るような付近の道路には通学路として様々な安全対策が施されている。
歩車道分離、ガードレール、カラー舗装道路、登校時間の通行規制、ドライバーに注意を促す道路標示、道路反射鏡(安全ミラー)、横断歩道、信号の設置などだ。また、交通安全という意味とは異なるが防犯対策として携帯用の防犯ブザーの配布や防犯灯の設置といったことも必要に応じて行われている。
しかし朝鮮学校へはこのような措置があまり取られていないのが現状だ。ここでも正規の学校(一条校)ではないからという「理由」が立ちはだかっている。
しかしながら、それでも実際に交通安全対策が施されている所も幾つかある。
 日本全国の朝鮮学校における状況を調査したような資料は見当たらないが、何らかの施策がなされていることを把握できた数校の例をここに挙げてみたい。


● 【東京】東京朝鮮第九初級学校
                      
 杉並区阿佐ヶ谷にある東京朝鮮第九初級学校でも数年前に保護者、特にオモニたちの強い要請に応えようとした区議会議員の力添えもあり、「通学路」という道路標示や注意を促す看板の電信柱への立て掛けといった安全対策がとられることになった。写真「通学路」写真「電柱」






● 【埼玉】埼玉朝鮮初中級学校

埼玉朝鮮初中級学校では校門前を走る芝川沿いの道路の校門から見て右手前の所に「危い」という表示があったがペイントの剥げが激しく、「危い」という字も読みづらい状況になっていた。過去に、学校からその道路標示の塗り直しを打診した折り「一条校ではないから難しい」といった対応もなされていたようだが今年10月、保護者からの要求を受けたさいたま市の担当者(大宮区生活課)は現地調査をすぐに行った上で、校門を出て右手、左手の両サイドに「学童注意」という路面表示をすることを約束。同じ10月の末には工事が実施された。
写真「右手」写真「左手」




● 【兵庫】神戸朝鮮初中級学校、尼崎朝鮮初中級学校
  
神戸では数年前に、朝鮮学校を支えるおんなたちの会(会長:山村ちずえ)の働きかけが契機となり、朝鮮学校をはじめとする幾つかの外国人学校で交通安全対策がとられた。
特に周辺の交通量が非常に多い神戸朝鮮初中級学校では道路がグリーンにカラー舗装され、さらに学校角の交差点には信号機も設置された。
同じ兵庫県内の尼崎朝鮮初中級学校や尼崎東朝鮮初級学校では神戸よりもさらに前から登校時間に当たる朝7時半から9時までの間の通行規制をするという形での安全対策がなされている。

写真「神戸朝鮮初中級学校(大きな建物が校舎)」@
同A

写真「尼崎朝鮮初中級学校校門前





● 【福岡】北九州朝鮮初級学校&九州朝鮮中高級学校

北九州市に併設されている北九州朝鮮初級学校および九州朝鮮中高級学校の校門に至る道路は都市整備事業の関係で代替え地として九州朝鮮高級学校の所に北九州朝鮮初中級学校が移ってくることとなる(今年より新校地で初級学校と中高級学校に再編された形で授業開始)過程において行政とのやりとりを重ねた結果、道路の拡幅と歩道の敷設工事がなされたもの。なお、この歩道のデザインはツツジ色がベースになった美しいものだが北九州市の市花がツツジでそれは朝鮮の代表的な花でもあるということでその色が選ばれたとのこと。
写真「校門前道路」@
同A



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交通安全対策については通行規制や速度制限、横断歩道等、交通規制が伴うものは警察の所管となり、それ以外の注意を促す路面表示や看板といった標示物の設置については市区町村役場の所管になる。
なお路面表示等の安全対策については概ね自治体の裁量に委されているようで、その方法も電信柱に「文」というゼッケンのようなものを巻いて表示する方法をとるところもあればそうでないところもあったり、「スクールゾーン」という言葉自体、法的に定められた概念ではないようで役所によってもまちまちの概念で使っていたりといった具合である。したがって安全対策についての要請などを行う場合は他府県での経験を参考にしながらも必ず、当該地の役所に制度等を打診してみるべきである。また仮に一条校でないから云々といった回答をする場合は必ずその根拠となる法令や条例また要綱といったものがあるのか問いただしてみることが大事である。そういったものがないなら裁量の余地が多分にあるわけで、その余地があればあるほど働きかけることによる効果も期待し得るからである。
 

災害共済給付制度

独立行政法人日本スポーツ振興センター(日本体育・学校健康センター)の災害共済給付制度にも朝鮮学校は各種学校ということで加入できない現状にある。
スポーツの振興と児童生徒等の健康の保持増進を図るため、その設置するスポーツの振興のために必要な援助や学校の管理下における児童生徒等の災害に関する必要な給付等を行い、国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とする(独立行政法人日本スポーツ振興センター法)同センターは学校管理下での災害に対して共済給付事業を行っているが、経費については国が事務費のほとんどを運営費交付金として負担し、災害共済給付の原資となる財源は、国の補助金と学校の設置者及び保護者が共済掛金として一定の割合で負担するもので、災害時の支給額も手厚く、医療保険並の療養に要する費用の額の4割(そのうちの1割分は、療養に伴って要する費用として加算される分)となっている。掛け金とのかねあいから見ても民間の保険に比べ著しく有利である。
実際、運動場での怪我など学校生活における災害はつきものであり、朝鮮学校でも学校ごとに民間の保険会社へグループ保険の形で入っている所が結構あることから考えてもこの制度への加入に対する潜在的ニーズは高いものと思われる。
改めて言うまでもないことだがこの災害共済給付制度も国の補助金によって支えられている制度であり、その国の補助金の元となる税金には在日朝鮮人からのものも当然含まれているのである。日本国憲法第30条には「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」としているがここでいう「国民」に朝鮮人をはじめ在日外国人は該当することになっている。ならば同センターの目的にある「国民の心身の健全な発達に寄与する」にある「国民」からは排除するようなものの考え方ではなく、この場合も国民同様、在日外国人の「心身の健全な発達に寄与する」ためにその人たちが多数通う民族学校・外国人学校にも適用範囲を広げるというのが自然なものの考え方であり、道理であろう。


学校医、健康診断費

日本の学校では近隣の開業医などに学校医を嘱託しているのが一般的である。そして公立学校の場合、その設置者である地方自治体が一定の手当を学校医に対して出している。健康診断等も学校医を中心に行われるがそういった費用も当然ながらすべて行政が負担しており、学校医が公務中に怪我をした場合のための公務災害補償の制度まで整っている。しかしながら朝鮮学校をはじめ民族学校・外国人学校にはこういった制度からも排除されているのである。朝鮮学校では現在、同胞の医師ら(理解ある日本人医師が携わっているところもある)の奉仕的な活動によって健康診断や歯科検診等が行われているが、診断に使う医療器具なども医師の持ちだしになっていることが多いようだ。
滋賀の大津市は同市内にある滋賀朝鮮初級学校に対し、学校の運営費に対する補助金を出しながらもそれとは別に健康診断費を出しているが、こういった保健、医療の分野における行政によるフォローについては地域にある学校として朝鮮学校等にも一条校と分け隔てない対応がとりわけ求められていると言えるだろう。


防犯ブザー

昨年、子どもを連れ去る事件が日本各地に頻発したのに対応し、多くの自治体が地域の小学校に防犯ブザーを配布するという予防措置をとった。しかしほとんどの場合、朝鮮学校には行政自ら配布しに来るということはない。それでも東京の杉並区は東京朝鮮第九初級学校に児童数分の防犯ブザーを持ってきたという。これは杉並地域において朝鮮学校保護者たちが積み重ねてきた交流活動の賜と言えるだろう。また埼玉の川口市でも一時流行った「たまごっち」のような形・サイズの防犯ブザーが配られていたが、新聞の地域欄でそのことを知った学父母のオモニが川口市に電話し、「朝鮮学校に通ううちの子には貰えないのか」と尋ねたところ、「川口市立の小学校には配布しているが私立学校については希望があればお渡しすることにしている。朝鮮学校の子どもさんについても希望があればお渡ししますよ」と言ったので、その日のうちに市役所に出向いて貰い、その後すぐに川口市を活動地域とする総連埼玉南部支部に連絡。南部支部では南部支部が管轄する地域にある蕨市、鳩ヶ谷市、戸田市にも問い合わせ、すべて希望者があれば配布しますと承諾を得ると ともに、そのことを地域の学父母たちに知らせるという措置をとる、ということがあった。
しかしその一方で、行政に問い合わせたが朝鮮学校は対象校ではないと一蹴され、独自で購入している朝鮮学校もあるということである。
携帯用の防犯ブザーではないが、2001年6月に起きた大阪教育大付属池田小学校事件をきっかけに異常者の侵入に備えた防犯装置の取り付けが各地で進んだが東京都や京都では行政が当初、朝鮮学校をその補助対象校に入れていなかったのに対し、朝鮮学校および学校関係者が強く要請した結果、その補助対象校としたということもあった。
一条校でないから多くのことから排除してしまう現制度のあり方自体に大きな問題があり根本的な解決にはこの制度のあり方自体のいわば構造改革が必要である。しかし、その構造改革がなされていない状況においても「一条校でないから駄目」と言われて、また放っておかれて、「制度自体が変わらねば」とわかったような顔して言ってみても何も始まらない、制度自体を変えるためにもおかしいと思えば「『一条校でないから駄目』は現状にあわない。それは現状にも道理にもあわないから駄目」と相手に向かって声を発して行くことが大事である。

☆ 東京朝鮮第九朝鮮初級学校では
同校では学校のバザーを地域社会に根付いたバザーにしようとする様々な工夫、同校アボジ(父親)会と近隣の日本の学校に子どもを通わす父親たちとの交流、行政への要請等を精力的に行う中で防犯ブザーのみならず、防災ずきんも杉並区から日本の学校と同様に支給されており、また公民館使用も日本の学校と同様に無料でといった扱いを受けている。また近隣の日本の学校との交流の中から、その学校のプールを無料で使用させてもらうといったことまで実現している。


朝鮮奨学会の奨学金


行政における奨学制度においても兵庫の芦屋市や西宮市などの奨学金制度や京都市の就学援助制度など返済義務がないもので朝鮮学校にも適用されているものもある一方、いまだ朝鮮学校には適用されていないところも多い。
また行政以外による奨学金制度でも朝鮮学校の生徒たちが排除されていることが多いようである。
とりわけ朝鮮人の子どもたちのために設けられ既に100年の歴史を持つ財団法人朝鮮奨学会の奨学金が朝鮮学校や東京韓国学校に通う生徒たちに適用されないのはナンセンス極まりないと言っても過言ではないだろう。
同財団の寄付行為の第 3条には「この法人は、日本の諸学校に在学する韓国人・朝鮮人学生に対し奨学援護を行い、もって有為な人材を育成することを目的とする。」としているがこの目的の趣旨からしても当然「日本の諸学校」の中に民族学校を含めて解釈するのが妥当であろう。なお同財団ではその奨学金給与規程第1条に「韓国人・朝鮮人であって、学校教育法第1条に規定する高等学校、大学(大学院を含む)に在学し、学業、人物ともに優秀で、かつ健康であって、学資の支弁が困難と認められるもの」としており、ここで「一条校」要件が定められているのであるが、これは総聯、民団の代表や在日朝鮮人問題や人権問題に造詣の深い学識者で構成する理事会にて議決し、文部科学大臣の承認を受ければ変更可能となっている。朝鮮半島において南北が和解に向かい着実に前進している時代である。日本でも各民族団体の理事が手を取り合って、日本の理事の支持も得ながら規定改正を議決し、文科大臣の承認を取り付ける試みがなされても良い時期は既に到来しているのではなかろうか。    
 

Jリーグ外国人選手枠

財団法人日本サッカー協会(JFA)は「プロサッカー選手に関する契約・登録・移籍について」という規定においてプロ契約を締結した外国人選手の登録数を原則として「1チーム3名以内」と定めている。しかし在日外国人のことを考慮し、日本国籍を有しない場合でも、日本生まれなら1チームにつき1名に限って外国籍選手とはみなさないという規定を設けている。しかしそこにはさらに条件が設けられている。
「学校教育法第1条に定める学校において、教育基本法第4条に定める義務教育中の者または義務教育を終了した者」、「学校教育法第1条に定める高等学校または大学を卒業した者」というのがその条件だ。つまり「ただし日本の学校に通っていなければ駄目よ」ということだ。
果たして、この学校条件に何らかの合理的な理由を見いだすことが可能な人が存在するのだろうか。
この条件のため仕方なしではあるが、実際Jリーグで活躍する朝高出の選手らは通信制や定時制の高校へのダブルスクールという形でその在日枠に入る資格を得ており、このことはこういった学校条件は単に本来不要な負担を生徒やその保護者に加えている以外に何の意味もないことを雄弁に物語っている。
 朝鮮学校に通う男子生徒の中でサッカーは昔も今も変わらぬ一番人気のスポーツである。子どもたちの夢に水を差すのはイエローカードであり、その進路に障害物を置くのはまぎれもなくレッドカードである。JFAはスポーツマンシップに則ってみてもこのような規定をいち早く改正すべきである。   

(以上文責:金東鶴)

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