民族教育の権利を知るための24のキーワード

金東鶴(在日本朝鮮人人権協会)
*「月刊イオ」二〇〇三年六月号の掲載原稿に加筆修正をしたものです (20101220)

●民族教育の始まり

日本が朝鮮を植民地支配していた時代、朝鮮人は「日本人になること」を強制され(同化・皇民化政策)ており、朝鮮語教育をはじめ民族教育は禁止されていました。

一九四五年八月一五日、解放を迎えた在日朝鮮人たちは、まず自分たちの子どもに母国語を教えるために、各地で朝鮮語講習所を開きます。これが朝鮮学校のはじまりです。そして、それは急速に組織化、体系化された民族教育事業へと発展し、解放から二年たった一九四七年の時点における朝鮮学校の数は、初等学校五四一校(生徒数約五万八千人)、中等学校七校(生徒数約A千八百人)にまで上ったといいます。

 

●4.24阪神教育闘争

 一九四八年一月二四日、GHQ(連合軍総司令部)の指示を受けた文部省は「朝鮮人の子弟であっても学齢に該当する者は日本人同様、市町村立又は私立の小学校又は中学校に就学させなければならない」という内容の通達(学校教育局長通達「朝鮮人設立学校の取扱いについて」)を出します。この通達は在日朝鮮人に対し、民族学校で学ぶことを禁止して、日本人学校への入学を強制しようとしたもので、これに基づき全国各地で「朝鮮人学校閉鎖令」が出されました。「朝鮮学校を死守しよう!」のスローガンのもと、在日朝鮮人は学校を守るために立ち上がります。兵庫では四月二四日、県知事をして閉鎖命令を撤回させるに至ります。これに対し米占領軍は阪神地区に「非常事態宣言」を出し、戒厳令下、千人をゆうに越える朝鮮人、また彼らを支援する日本人を逮捕します。四月二六日には警官隊が大阪府庁前の抗議行動に集まった同胞たちに発砲し、金太一少年(一六)が射殺されるという事件まで起こりました。

 しかし、阪神地区だけで数百人が重軽傷を負うという犠牲を出しながらも続けられた朝鮮人たちの果敢な闘争のまえに日本当局も朝鮮学校関係者の要求を一定程度認める覚書を交換せざるを得なくなります。

 阪神地区で繰り広げられたこれら一連の反対運動、抵抗運動を4.24阪神教育闘争といいます。

 

●朝連解散、再び学校閉鎖令

 一九四八年の「学校閉鎖令」につづき、日本政府は一九四九年、在日本朝鮮人連盟(朝連)に強制解散を命じ、幹部は公職追放、財産はすべて没収という暴挙にでます。そしてふたたび、朝鮮人学校の閉鎖命令が出されました。

 このような一連の弾圧の結果、少なくない朝鮮学校が閉鎖に追い込まれるという大きな打撃を受けます。しかし必死の抵抗運動の結果、自主学校として守り抜いたところ、日本の公立校形式を取って残ったところ、日本の学校での民族学級といった形で民族教育を存続させたところと、様々な形態にはなるものの民族教育の命脈は保たれ、やがて再整備されていくこととなります。

 

●ふたつの一九六五年文部事務次官通達

 韓日条約が締結された一九六五年の年末、ふたつの文部次官通達が各都道府県に出されました。

@「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定における教育関係事項の実施について」、
 A「朝鮮人のみを収容する教育施設の取扱いについて」というものです。

  その内容は、日本人学校就学を積極的に奨励し、「日本人子弟と同様に取り扱うものとし、教育課程の編成・実施について特別の取扱いをすべきではない」(民族学級の否定を意味する。〈通達@〉)、朝鮮学校に対しては「朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校について、わが国の社会にとって、各種学校の地位を与える積極的意義を有するものとは認められないので、これを各種学校として認可すべきでない」(民族学校の社会的抹殺を意味する。〈通達A〉)としたもので、政府当局の本質的なねらいはすべての朝鮮人の子どもたちに同化教育を強制し、その日本人化をはかることにあったといえます。

 

●一九六五年通達の亡霊

 一九六五年通達の出された同じ年、内閣調査室が出した「調査月報」七月号の次の文章は通達の目的をはっきり教えてくれています。「わが国に永住する異民族が、いつまでも異民族としてとどまることは、一種の少数民族として将来困難深刻な社会問題となることは明らかである。彼我双方の将来における生活と安定のために、これらのひとたち(在日朝鮮人)に対する同化政策が強調されるゆえんである。すなわち大いに帰化してもらうことである」。

 各種学校としてすら認める積極的意義を有さないとした通達は一九九六年下関朝鮮初中級学校の校舎建て替え時にも「指定寄付金」という税制上の優遇措置(インターナショナルスクールには認められている)を認めない理由として使われており、このことは通達が単に昔の話として片づけられないことを教えてくれています。現在、二〇〇〇年四月より地方分権一括法が施行されたこととの関係でこの通達はもはやシステム的に無効になったと日本政府はしていますが、この通達の認識を変えたかどうかについての見解は曖昧にしたままとなっています。

 

●各種学校

  ここ一〇年程の間に各地で設立されてきたブラジル人学校等の例外を除き、多くの民族学校、インターナショナルスクールは日本の学校教育法上、その第一条に定める「学校」(いわゆる「一条校」)ではなく、第一三四条に定める「各種学校」として扱われています。この各種学校というのは、一般的には単科で技能的な教育を施す施設、例えば自動車教習所や珠算(そろばん)教室、生け花教室といったものがこれに該当します。日本の一般の学校と同等の教育を行う民族学校やインターナショナルスクールがこれらと同様に「各種学校」として扱われるが為にそこに通う子どもたちが、その保護者がまた学校関係者が様々なハンディを負わされています。こんなナンセンスな、誰が考えてもおかしなことが二一世紀を迎えた今日においても未だにまかり通っているのです。

 

●一条校

 日本の学校教育法はその第一条で「第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする」と定めています。この第一条で定める一般の学校がいわゆる「一条校」です。

 「一条校」になると日本の検定教科書の使用が義務づけられる等、母国語である朝鮮語による民族性を重視した独自の教育ができないという問題があり、一部の例外を除いてほとんどの外国人学校は「各種学校」等の地位に甘んじているのが現状です。朝鮮学校をはじめとする外国人学校には「一条校」にならなくとも「一条校」と同等の地位を保障するか、もしくは「一条校」になっても教育の独自性を保障するようにするかの何れかに法を整備する必要があります。

 

●他の外国人学校

 日本には朝鮮学校の他にも四つ(内、大阪二校と京都の一校は一条校)の民団系の学校や、五つの中華学校(大陸系二、台湾系三)、インドネシア人の学校といったアジア系の学校をはじめドイツ、フランスといったヨーロッパ系の学校、ブラジルやペルーの南米系の学校、そしてインターナショナルスクール等々、様々な外国人学校があります。兵庫では震災を機に外国人学校協議会が結成、東京でも朝鮮学校、韓国学校等を中心に毎年、合同の絵画展が開かれるなど外国人学校同士の交流の輪は少しずつ拡がっています。

 

●統計に見る朝高卒者の進路

 東京朝鮮高級学校に関する資料によれば、大学進学率は二〇〇一年で五八パーセント、専門学校を含んだ進学率は七六パーセントに上ります。また、大学進学者のうち朝鮮大学と日本の大学に行く数はちょうど半分ずつぐらいとなっています。日本の高校の大学進学率は同年で四五・一パーセントですから朝鮮学校は進学率を見ても日本の高校に引けをとりません。

 

● 大学受験資格

 朝鮮学校は学校教育法に定める「学校(一条校)」ではないため朝高を卒業しても「高卒」者としての地位を文科省が認めていません。そのため朝高卒業生にはそれのみで大学入学資格を認めることは出来ないというが文科省の立場です。

しかし多くの私立大学、公立大学では自主判断をもって朝高卒者の大学入学資格を認め、受験させているところが従来より相当数ありました。文科省の理不尽なやり方を「否」としてきたのです。そして国立大学(国立大学法人)も二〇〇三年九月の文科省の弾力化措置を機に、二〇〇四年度入試から基本的には入学資格を認め受験の門戸を開くこととなりました。

 

●二〇〇三年九月の文科省の弾力化措置

二〇〇三年三月はじめ文科省は欧米系のインターナショナルスクールにのみ大学入学資格を認める方針を打ち出しましたが、私たちの抗議、世論の猛反対を受けアジア系の民族学校等を排除しない方向で再検討するということになりました。その結果、九月一九日に弾力化措置が出されました。それは、国際的(といっても欧米系のものだけですが)な学校評価機関が認定する学校(多くのインターナショナルスクールが該当)、本国が認定していることが公的に確認できる学校(朝鮮学校以外の民族学校が該当)は日本政府として省令や告示によりこれを認める一方、朝鮮学校については各大学の個別審査による独自判断をすることを「可」とする、というものでした。

それ以前の、各大学の個別審査による独自判断をすることを「不可」とする方針を改めたこと自体は前進であり、その結果、受験の門戸を開いていない国立大学の受験の門戸を開けさせることになったのは事実です。しかし、台湾系の中華学校(台湾とは国交はないが日台間の交流協会を通して公的確認が出来るという「理屈」を用いている)も含め他の外国人学校は一律に大学受験可とする一方で、朝鮮学校のみを大学の判断にゆだねたのはやはり不当な差別であり、そのためごく一部ではありますが、未だ受験資格を認めない大学があります。

 

● 留学生、帰国子女

 留学生や帰国子女たちについては、学校教育法施行規則第一五〇条に「外国において学校教育における一二年の課程を修了した者又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定したもの」と規定されており、これに基づき無条件で日本の大学への受験資格を得ています。

  国立大学をはじめ多くの大学では一般入試とは別に留学生を対象として別途入試を行っており、同様に帰国子女の特別枠を設けて、帰国子女を受け入れているということです。 留学生、帰国子女にはこのように門戸が開かれているにもかかわらず、日本で生まれ、日本に定住する朝鮮学校の生徒たちには未だ門戸が閉ざされたままなのです。

 朝鮮学校をはじめ日本にある外国人学校の生徒たちにも、留学生や帰国子女と同様その特殊性を考慮した枠組みが設けられるのが本来は筋であるとも言えます。しかしながら、受験する資格すら長らく与えられてこなかったのです。

 

●朝大卒業生の日本の大学院入学資格

 朝大卒業生の日本の大学院への入学資格は私立、公立については基本的に大学(学部)の方と同様な判断がなされており多くの大学において門戸が開かれています。国立大学大学院についても、国内外での世論の高まり、相次ぐ国連勧告や、国会での議員による追求、そして一九九八年に京大大学院が、一九九九年の初頭には九州大学大学院がそれまでの文科省の否認姿勢をはね除け独自に入学を認めたということが決定打となり、一九九九年の夏に大学院入学資格については各大学の自主判断に委ねるという一定の弾力化措置がとられるに至りました。その結果、現在では国立でも多くの大学院が受験の門戸を開いており、実際に入学したものも多数います。

 

●国家資格の取得

 朝鮮大学校の学生が資格にトライする場合もかつては様々な壁がありましたが、二〇〇〇年代に入り、多くの前進がありました。二〇〇五年度からは旧司法試験の一次試験免除が朝大卒業生にも認められるようになり、同年から税理士の受験資格も朝大の経営学部等の三年生以上は受けられるようになりました(それまでは日商簿記一級などがなければ受験できなかった)。また社会保険労務士も二〇〇五年から朝大卒業生は受験できるようになり、保育士もそれまでは朝大在学中に受験することが出来なかったのですが、二〇〇五年からは保育課2年生も卒業見込みで受験可能になりました。

 看護学校についても、二〇〇四年度以降、多くの看護専門学校が朝鮮高校卒業生に受験の門戸を開いています。

●教育助成金

 在日朝鮮人をはじめとする外国人も納税の義務は日本人と同じように課されているにもかかわらず、民族学校への国庫補助は基本的になされないという状態が続いてきました。多くの地方自治体が独自の判断で助成金を出してはいますが、日本の公立とは桁違い、私立と比べても格段の差があるのが現状です。各自治体からの朝鮮学校への助成は学校経常費への助成や保護者・生徒への助成、設備費用への助成、健康診断費への助成等、地域によって様々な名目で出されており、その金額も、自治体ごとに格差があります。各地域での取組をすすめるにおいて他の自治体がどのような名目で出しているのか、また日本の学校にはどういう名目のものが、いくらぐらい出ているのかをしっかり把握し、運動を進める必要があるでしょう。

 

●「高校無償化」制度の適用問題

二〇一〇年度から始まったいわゆる「高校無償化」制度は二〇一〇年一二月一九日現在もなお、朝鮮学校への支給が決まっていません。既に審査基準なども決定、発表され、各朝高からの申請も受理されているにもかかわらず、朝鮮半島で起きた砲撃戦を理由に日本政府が審査手続きを停止しているからです。国籍を問わず、高校生段階の学びに励んでいる生徒を等しく支援することを制度の趣旨として、各種学校の外国人学校もその対象にしたこの制度から朝高生のみを排除することは、明らかな差別であり、朝鮮半島情勢などを理由にすること自体、法案審議過程で示された「外国人学校の指定については、外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきものである」という政府統一見解にも反する全く道理に合わないことです。

 

●寄付金にまでも差別

 教育助成が微々たるもの故、朝鮮学校の運営には寄付金が欠かせないことは周知の事実です。ところが、この寄付金にまで差別が加えられています。まさに「泣きっ面に蜂」のような状態に朝鮮学校と保護者らは置かれているのです。

 日本の公立校への一般の寄付が損金・控除対象として納税時に考慮されるのは勿論、私立学校も「特定公益増進法人」として扱われ、一定の優遇がなされています。さらに二〇〇三年三月三一日には、初等教育または中等教育を外国語により施すことを目的として設置された各種学校(財務省令)のうち、短期滞在者の子どもへの教育を目的とし、欧米系の四つの学校評価機関の認定を受けたもの(文科省告示。インターナショナルスクールのみが対象になる)は、「特定公益増進法人」として、明くる四月一日より私立学校同様に税制上、優遇していくという決定がなされました。この時期、ちょうどインターナショナルスクールにのみ大学入学資格問題において「アジア系民族学校等の排除はあからさまな差別だ」という批判世論が高まっていたのですが、この寄付金税制問題で、その批判を無視する形でなされたのでした。

 

●指定寄付金制度

 実は寄付金税制における、インターナショナルスクール優遇は、一部で既になされていきました。校舎建て替えや増改築時等、一時に多額の費用がかかる場合に集める寄付への優遇措置である「指定寄付金」制度というものがあります。この制度の適用においても、日本政府は一九六五年通達等を持ち出し、朝鮮学校には原則として認めない(阪神・淡路大震災後の復旧工事の時にのみ他の外国人学校と同様に認められた)としてきた一方で、インターナショナルスクール等については、短期滞在者が主に通う外国人学校に便宜を図るのは「対内直接投資を促進し、海外から優秀な人材を呼び込む上で重要」(大島令子衆議院議員の質問に対する日本政府答弁書〇二・八・三〇より抜粋)ということでかつてより認めてきたのです。

 

● チマチョゴリ事件

 朝鮮学校に通う子どもたちへの嫌がらせは依然、跡を絶ちません。一九六〇年代、七〇年代には朝鮮学校生への集団暴行事件が社会問題となりましたが、一九八〇年代以降も朝鮮半島に係わる事件等が起こるたびに嫌がらせ事件が続発するという状況が今日まで連綿と続いています。女生徒のチマチョゴリを刃物で斬りつけるというはその嫌がらせ事件の一形態にすぎませんが、か弱い女生徒を標的とし、また民族の象徴といえるものを攻撃対象にしていることから、朝鮮学校生徒への嫌がらせ事件を象徴する表現として、「チマチョゴリ事件」という言い方がよく使われています。

政府は再発防止の啓発活動に努めているといいますが、効果的な啓発活動が活発に行われているというにはまだまだほど遠い状況にあります。ましてや国家が法制度によって何十年にも亘り差別する状況を続けながら、民間に差別行為を行わないよう呼びかけることにどれほどの説得力があると言えるでしょうか。

 

●国際人権諸条約

 日本も批准している人権に関する条約として「人種(民族)差別撤廃条約」、「子どもの権利条約」、「国際人権規約(社会権規約、自由権規約)」といったものがあります。

 これらの条約はすべて民族自決の精神に基づき、「締約国は、状況により正当とされる場合には、特定の人種の集団又はこれに属する個人に対し人権及び基本的自由の十分かつ平等な享有を保障するため、社会的、経済的、文化的その他の分野において、当該人種の集団又は個人の適切な発展及び保護を確保するための特別かつ具体的な措置をとる。…」(人種差別撤廃条約第二条二項)、「…当該少数民族に属し又は原住民である児童は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」(子どもの権利条約第三〇条)というように民族的マイノリティー(少数者)の言語や文化を保障、保護することを求めています。条約に批准した以上はその条約の規定は国内の法律に優先し、条約の定めることに合わない法制度は改正しなければなりません(憲法九八条二項)。

 

●各条約委員会の勧告

 批准国が先に挙げた人権諸条約に定めた諸権利を保障しているか否かに関する審理を各条約委員会は数年おきに行います。その日本についての審理において、朝鮮学校への差別が一九九八年以降ことごとく問題視され、日本政府は「…委員会は特に、朝鮮語による学習が認可されていないこと、および在日朝鮮人の生徒が高等教育へのアクセスにおいて不平等な取扱いを受けていることを懸念している。締約国が、この点における朝鮮人をはじめとするマイノリティの差別的な取扱いを撤廃するための適切な手段を講じ、また日本の公立学校において、マイノリティ言語による教育へのアクセスを確保するよう勧告する。」、「委員会は朝鮮人(Koreans)、主に子どもや児童・生徒に対する暴力行為に関する報告、およびこの事件に関する当局の不適切な対応を懸念し、政府に対して、当該行為を防止し、それに対抗するためのより確固とした措置をとるよう勧告する。」(人種差別撤廃委員会 二〇〇一・三)、「締約国は、朝鮮語で教育を行う学校(朝鮮学校)に対して国の助成金を増額し、また朝鮮学校への寄付者に対しても他の私立学校への寄付者と同様の財政的利益を与えることにより適切な財源を保証し、また朝鮮学校の卒業証書を直接の大学入学資格として認めるべきである」(社会権規約委員会 二〇〇八・一〇)、「委員会は、締約国に対し、外国人学校への補助金を増額し、かつ大学入試へのアクセスにおいて差別が行なわれないことを確保するよう奨励する」(二〇一〇・六)といった勧告を受け続けています。日本は直ちに勧告を受け入れ、法整備等の是正措置をとるべきなのです。

 

●一九九八年の日弁連勧告

一九九八年二月、日本弁護士連合会(日弁連)は朝鮮学校関係者の人権救済の申立に応え、「朝鮮各級学校のみならず、いわゆるインターナショナルスクールなど日本国に在住する外国人の自国語ないし自己の国及び民族の文化を保持する教育に関して重大な人権侵害があると同時に、子どもの権利条約など関係条約違反の状態が継続していると判断」し、@「日本国の学校教育法第一条の各義務教育課程、高等学校教育、大学に相当する教育を授受しているものにその資格を認めず、法律に根拠を持つ公的な資格を認定する試験を受験させないことは重大な人権侵害であり、かかる事態を速やかに解消させるべきである。」、A「少なくとも私立学校振興助成法によるのと同等以上の助成金が交付されるよう処置をとるべき」、B各種学校としての地位さえも与えるべき積極的な意義がないとした一九六五年通達については「撤回させるなどこれによる人権侵害を除去し、その被害を回復する適当な処置を取るべきである。」という勧告を内閣総理大臣および文部(当時)大臣に行いました。この「日弁連勧告」はその後の一連の国連(各条約委による)勧告とともに日本がとるべき対応を明確に指し示したものと言えます。

 

●二〇〇八年の日弁連勧告

 一九九八年の日弁連勧告後、朝鮮学校の処遇改善において一定の前進はあっものの抜本的な処遇改善に至らない状況の中、二〇〇八年再度、日弁連から勧告が出されました。

この勧告では、前述の「特定公益増進法人」や「指定寄付金」が朝鮮学校や中華学校には適用されないという問題、また助成金が10年前の勧告以後、未だ改善されていないこと、そして大学入学資格において朝高卒業生も大学の個別審査に委ねるのではなく、政府として入学資格を認めるようにすべきという内容でした。

 なお、高校無償化問題についても日弁連(二〇一〇・三)をはじめ各地の弁護士会が朝高への適用を求める会長声明を出しています。

 

●朝鮮学校の処遇改善

 朝鮮学校を正規の「学校」として位置づけ、扱おうという姿勢は日本政府・文科省からは未だ出てきているとは言い難い状況ですが、民間次元や各地方自治体ではその実態に則し、正規の「学校」と同等に扱っていこうという姿勢が確実に根づきだしていると言えます。

 この約二〇年間、多くの大学、大学院が受験の扉を開き、JRの定期券割引率差別も是正され、高野連や高体連、中体連の主催するスポーツ競技大会への参加もできるようになりました。しかし、日本政府は外国にルーツを持つ子どもたちの教育について同化という姿勢で臨むというあり方からまだ抜け出してはいません。

そしてそのあり方は、一九九〇年の入管法の改定以降急増した日系ブラジル人、ペルー人の子どもたちの教育においても深刻な問題を生じさせています。

朝鮮学校の処遇改善、民族教育の権利保障は、これからも増え続けることが予想される外国人を迎える日本社会において、今後、真の多民族多文化共生社会を実現できるかどうかの試金石となることでしょう。

また在日朝鮮人側においては処遇改善の流れをより早くするために、不当なことにはより声を挙げ、また公開授業や交流活動をさらに積極的に進めていくことが大事だと言えるでしょう。           

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